研究課題/領域番号 |
26370342
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
板倉 厳一郎 関西大学, 文学部, 准教授 (20340177)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 9.11同時多発テロ / 英語圏文学 / ポストコロニアル文学 / 原爆文学 / 比較文学 / モダニズムの影響 |
研究実績の概要 |
カーミラ・シャムシーの『焦げ付いた影』と彼女が影響を受けた日本の原爆文学との比較をおこない、9.11文学と原爆文学との比較研究の可能性を探った論文が、Inter-Disciplinary社の論文集に掲載されることが決まった。(平成28年1月刊行予定であったが、刊行は少し遅れている。)
平成27年9月、Fear, Horror, Terror第9回大会にてH. M. ナクヴィの『ホーム・ボーイ』とモーシン・ハミッドの『気の進まぬ原理主義者』論を発表した。これは、この二作品が「危険な褐色の男」という中東戦争時から生まれたステレオタイプにいかにしてあらがってきたかを探ったものである。
平成28年3月、Trauma: Theory and Practice第6回大会にてナディーム・アスラムの『かなえられぬ祈り』論を発表した。これは、アスラムがアフガニスタンで様々な国籍の登場人物が受けたトラウマを表象するにあたり、いかにヨーロッパのモダニズムおよびフロイトの影響を受けていたかを探るものである。パキスタンでは、ウルドゥー語文学でさえ、1930年代の進歩主義運動以降ヨーロッパのモダニズムの受け入れが始まった。これに加え、1980年代以降はジア=ウル=ハク軍事政権によるイスラム化政策以降、知識人が自国の伝統よりも欧米の知の枠組みに傾倒することになった。アスラムの作品も、そういった流れを汲むものである。この作品の分析を通じて、ウルドゥー語文学を含むパキスタン文学の潮流の中に9.11文学を位置づけられる可能性を見出したことは大きな収穫であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度に予定していたナディーム・アスラムの『かなえられぬ祈り』論が、学会開催時期が平成28年3月になったため、平成27年度中に発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画時にはまだ出版されていなかったナディーム・アスラムの『盲人の庭』が、9.11以降のアフガニスタンを『かなえられぬ祈り』とは異なるアングルから扱ったものであることがわかり、平成28年度はこちらの研究をすることにした。平成28年7月に開かれる、イギリス連邦文学の最大の学会であるACLALS大会での発表も決まっている。これにより、9.11以降の状況を扱ったパキスタン系作家の文学の流れをより正確につかむことができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年12月に平成28年3月の国際学会での発表が決まったため、前倒し請求をせずに旅費のみを請求し、参加費等を平成28年度に請求することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分を平成28年3月の国際学会の参加費として使用する。また、平成28年度分は、平成28年度の国際学会(7月に開催されるイギリス連邦文学研究における最大の学会ACLALSでの発表)参加費・旅費、ならびに成果発表のための研究図書購入に使用する。
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