研究課題/領域番号 |
26370345
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
ウェルズ 恵子 立命館大学, 文学部, 教授 (30206627)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移民 / 文化 / 歌 / 芸能 / immigrants / vernacular culture / songs / entertainment |
研究実績の概要 |
16年度はニューヨークで人気を博したミュージカルの作詞者と彼らの歌詞に焦点をあて研究した。既存研究ですでに指摘されてきたことではあるが、アメリカの大衆文化、とくに20世紀初頭のニューヨークを中心としたミュージカルとポピュラーソングの分野で、東欧から移住したイディッシュが活躍した。主な作詞家はこれらの人々である。本年度は、ニューヨークで、作詞家のインタビューを聞くなどの調査を行った。(New York Public Library for the Performing Arts, Dorothy and Lewis B. Cullman Center, Center for Jewish History 他) Ira Garshwin のインタビュー (recorded in Beverly Hills 1971 August 16, interviewer Max Wilk) に明らかなのは、20年代から40年代のブロードウェイ黄金期に、ミュージカルの占める割合は10%程度であったこと、にもかかわらず作詞作曲ともに優れた作品が続出したこと。その背景に、ユダヤ人家庭がステイタスシンボルとしてこぞってピアノを購入したことや、レコードが購入しやすくなったこと(3枚で1ドル、つまり25ドルあれば75枚のレコードが買えた)が理由にあるという。このインタビューシリーズをもう少し時間をかけて調査すれば、黄金期の作品生産者・作品流通業者・作品消費者の関係と作品内容の相関が解き明かせるのではないかと思う。そこへ、こうした人々の親世代の出身や価値観、繁栄へ向かうアメリカ社会の楽観性やエネルギーを読み込んで解釈したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1910年代までに子供として移民してきた人々やこの時代に移民した人々の子供たちが成長して作り上げた一大産業といえる、アメリカのミュージカルに焦点を絞り、作詞家の研究を進めた。本年度はインタビュー録音など一次資料の所在を確認し、調査に当たった。資料が多いとは言えない大衆文化研究であるが、歌詞に焦点を当ててどのような視点で成果を出すか考えた一年だった。詳しい報告論文や研究発表などはできなかったが、東ヨーロッパとアメリカの価値観の連続性と相違、および平易で根拠なく楽天的かつ思想性をもたない歌詞の特質についての理由を特定できたこと、今後の方向性がはっきりして資料収集が終盤になってきたことなどにおいて、ほぼ予定を達成していると思う。 また、アメリカ社会の多文化性を伝えようとした著書において、ユダヤ系の文化についても解説できたのは、本研究からの収穫といえる。
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今後の研究の推進方策 |
集めた資料の検討とインタビュー録音の再調査。代表的な作詞家3人に絞って以下の視点で検討を詰めていきたい。 東ヨーロッパとアメリカの価値観の連続性と相違// 平易で根拠なく楽天的かつ思想性をもたない歌詞の特質についての理由の明確化// ラジオ、レコード等の普及との関連// 1920-30年代ニューヨークの状況との関連// 歌詞内容の個別性の特定// ユダヤ人家庭の特色と他のソーシャルグループとの協働性(特に、黒人、イタリア系、スコッツ・アイリッシュ)
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次年度使用額が生じた理由 |
3月にニューヨークへ調査に行くため予算を残しておいたが、予想よりわずかに少ない費用で調査を終えられたので、残金があった。
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次年度使用額の使用計画 |
17年度の調査旅費や資料費として活用する。
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