南欧東欧の都市移民の口頭伝承は困難だった。経済的苦境に加え出自の明示はマイナスに作用する場合が多く、移民はアメリカに進んで順応しようとした。二世以降はアメリカで教育を受け英語が母語になったので口頭伝承はさらに困難になった。他方、多数のアイルランド人を含めた1880-1930年代の「新移民」二世は、親世代が経済的成功へ邁進する傍らで、英語を十分に理解しない異文化出身者らにも享受可能な、宗教性が希薄で言語以外の表現技術も磨いた感覚的文化を創出していく。その例がミュージカルでありジャズであり、米映画の流行へ繋がった。感覚的で道徳的に保守的な大衆芸能文化の伝統は、戦後日本の文化にも影響を及ぼした。
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