研究課題/領域番号 |
26370346
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
塚田 幸光 関西学院大学, 法学部, 教授 (40513908)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | クロスメディア / アメリカ / 映画 / 表象文化 / 政治文化 / プロパガンダ / ヘミングウェイ / フォークナー |
研究実績の概要 |
2015年度は、映像文化研究と文学研究を軸に、3冊の図書、2件の招待講演を行った。編著『映画とテクノロジー』(ミネルヴァ書房、2015年4月)では、論文「シネマティック・ロボトミー―テクノロジー、暴力、『時計じかけのオレンジ』―」において、ロボトミー手術とキューブリック映画表象との関連性を論じた。共著『映画で読み解く現代アメリカ オバマの時代』(明石書店、2015年)では、論文「ゲイ・カウボーイと自閉するアメリカ―『ブロークバック・マウンテン』―」において、1960年代以降のカウボーイ表象の変容とアメリカの政治学の交差を論じた。アメリカン・アイコンがゲイ・カウボーイへと変質するプロセスに、アメリカの閉塞性を見出した。共著『ウィリアム・フォークナーと老いの表象』(松籟社、2016年2月)では、「グッバイ、ローザ―フォークナー、ニューディール、「老い」の感染―」を寄稿した。ニューディールの文化政策とフォークナー文学の交差を考察した。 また、米国サウスイースト・ミズーリ州立大学(SEMO)フォークナー研究所から、BioKyowa Awardを頂いた。それに伴い、2015年11月、SEMOにて招待講演”William Faulkner, Hollywood, and the Gothic South”を行った。さらに、2016年3月に開催されたAmerican Comparative Literature Associationの年次大会セミナー(Harvard University) “Ecocriticism in Japan: Season2”において、発表 “Catastrophic Tokyo: Re-thinking the Nuclear Walking Dead in Japanese Comics”を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究「クロスメディア・ヘミングウェイ ニューディールの政治文化研究」に関して、先に言及したように、その成果は3冊の図書(編著と共著)と2件の招待講演に顕著である。研究計画に対する達成度の高さは、これらの成果によって証明できる。 本年度(2015年度)は、文学、政治文化、映像文化など、各ジャンルに対して、クロスメディア的視座から考察した点に特徴がある。論文「シネマティック・ロボトミー―テクノロジー、暴力、『時計じかけのオレンジ』―」は、キューブリック映画論でありながら、ロボトミー手術をめぐる政治文化論であり、論文「ゲイ・カウボーイと自閉するアメリカ―『ブロークバック・マウンテン』―」は、ゲイ・カウボーイ論でありながら、アメリカ文化の精神分析であり、論文「グッバイ、ローザ―フォークナー、ニューディール、「老い」の感染―」は、フォークナー文学論であり、ニューディールの文化政策論でもある。ニューディールから冷戦期に焦点を当てた政治文化研究であり、映像文化論である点において、これら3編の論文が持つ意味は大きい。また、BioKyowa Awardを受賞したことで、ブロツキー・コレクションを有する米国フォークナー研究の拠点に深く関与できたことや、日本における「アメリカの影」を考察する意味で、米国比較文学会で発表する機会を得たことは、大きな研究成果と言える。 さらに本研究は、単著『クロスメディア・ヘミングウェイ』と単著『核シネマ』の出版によって達成度を証明できる。この2冊の大半は仕上がっており、研究の最終年度で完成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヘミングウェイ研究に関して、ボストン・ケネディ図書館での一次資料調査に加え、ニューディール期の政治文化研究とジャーナル研究を充実させる。これらは現在所属するハーバード大学のデーターベースから数多の資料を引き出すことができる。小説偏重の文学研究ではなく、クロスメディア的視座から再考察することで、新しいヘミングウェイ研究のスタイルを確立させる。成果は、単著『クロスメディア・ヘミングウェイ』で開示する。
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