2019(令和元)年度には以下のような研究活動を行った。 1)4月20日に日本アメリカ文学会中部支部大会シンポジウムに招待され、ハーレム・ルネサンスと黒人表象の変遷について発表し、現代の黒人視覚表象における問題がすでに萌芽していたことを明らかにした。 2)2019年はハーレム・ルネサンス100周年にあたり、全米各地でさまざまな企画や展示が行われていたが、かねてから研究課題として浮かび上がっていたオーガスタ・サヴェッジの初の回顧展が開催されていることがわかり、7月上旬にニューヨーク歴史協会でのサヴェッジ展を視察し資料収集することができた。サヴェジの多くの作品を実際に見ることができただけでなく、弟子であり、これまで論文を書いてきたジェイコブ・ローレンスやロメール・ベアデンとの関係を示す日記、写真、新聞記事、往復書簡などの貴重な資料も入手することができた。 3)8月にこれまで研究を続けてきたトニ・モリスンが急逝したため、モリスンと歴史的トラウマ表象についてこれまでの研究成果をまとめるような形で追悼論文を執筆し『ユリイカ』に発表した。10月には、昨年より執筆していたアリス・ウォーカーの「カラー・パープル』についての論文を『アメリカ文学と映画』において発表した。 4)2月にはワシントンDCにある国立アフリカ系アメリカ人歴史博物館を訪問し、歴史的トラウマ表象がどのように展示されているのかの調査を行うことができた。また3月上旬にはプリンストン大学ファイアーストーン図書館におけるToni Morrison Papersを調査することができた。まだデジタル化されていない膨大な資料があり、1週間という短い時間では足りなかったが、研究課題に関連したものを中心に資料収集した。この数年間の懸案事項でありさまざまな事情から実施することのできなかった調査だったが、ようやく最終年度に実施することができて安堵した。
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