研究課題/領域番号 |
26370352
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
日向 太郎(園田太郎) 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40572904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 西洋古典 / ラテン語韻文 / プロペルティウス / ティブッルス |
研究実績の概要 |
ティブッルスとプロペルティウスの比較研究を行うに先立って、ティブッルスの詩集の精読に今年度は費やした。詩人が、田園世界における自足自給を基礎としつつ、恋人デーリアとの愛の生活を夢想していたことを踏まえ、田園生活を題材とした文学作品についての調査研究を予備的に行った。その成果として、所属機関の紀要『言語・情報・テキスト』に論文「Carmina descripsi--ウェルギリウス『牧歌』第5歌について--」を発表した。東京大学大学院総合文化研究科の教員や慶應義塾大学言語文化研究所の所員らと一緒に、月に一度の割合でキケロー読書会を行い、『プブリウス・クイントゥス弁護』を講読しながら、法制度を含む古代ローマ社会の構造についての知見を深めた。年度末には、イタリアのフィレンツェとペルージャにおいて、文献調査と収集を行い、また留学時代以来交流のある現地の指導教授や友人と研究上の打ち合わせと意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、今年度は牧歌文学の研究とティブッルスの精読にもっぱら時間を割いたので、研究論文や新刊の研究書(たとえば、R. R. Caston, The Elegiac Passion. Jealusy in Roman Elegy; Hunter. H. Gardner, Gendering Time in Augustan Love Elegyなど)は十分通観することがかなわなかった。とはいえ、ティブッルスが少なくない影響を受けているウェルギリウス『牧歌』について、独自の視点から論考を示すことができたのは、ささやかながらも成果と言えるだろう。長いあいだ研究を続けてきたパウルス・ディアコヌスの『ランゴバルドの歴史』(知泉書館より出版予定)について、訳文の最終点検、さらに訳注や解題の執筆にも時間を取られたことも理由と言えるかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
長年を費やしてきた『ランゴバルドの歴史』の翻訳作業に一段落をつけたので、当該研究にはこれまで以上に時間や精力を傾注することができる見込みである。2017年度には、所属している日本西洋古典学会の欧文雑誌Jascaが刊行される予定なので、当該研究課題に即した論文の寄稿を目指す。そのためには、国内外の研究者との意見交換が一層必要となると思われる。幸い、今年度後半には研究休暇を取得できる見込みであり、イタリアに渡航して、文献調査や収集はもとより、おそらくピサ大学を中心とする現地の研究者との交流を積極的に行い、自身の研究をイタリアでも発表することを考えている。 この他、5月に日本英文学会において、造形芸術作品描写についてのシンポジウム(「言葉の絵を見る--エクフラシス再考」)に加わり、「古代修辞学におけるエクフラシス」という題目で報告を行う予定である。
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