プロペルティウスとティブッルスは、古代ローマの共和制末期に花開いた恋愛エレゲイア文学を代表する詩人である。両者の活動していた時代は重なっており、それぞれの作品のあいだには、主題や文学的類型の点で、共通性が数多く認められる。本研究は、このような共通性を示す箇所に特に留意しつつ、相互的影響の解明を試みている。作品内部に認められる同時代の出来事への言及から、プロペルティウスの詩集第1巻はティブッルスの詩集第1巻よりも先行し、ティブッルスの第1巻はプロペルティウスの第2巻に先行していたと確実に推定し得る。この推定に基づき、両者のあいだに存在し得たと思われる競合意識を探求している。
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