研究実績の概要 |
本研究課題の主たる方向性は、1)パスカル人間学の総合的研究、2)パスカルとモンテーニュの影響関係の研究、3)『ポール=ロワイヤル論理学』の翻訳・注解、の3つである。 今年度は、1)に関して、私の博士論文(パリ=ソルボンヌ大学、2010年提出)の3分の2程度の内容を翻訳し、大幅な改訂を施した著書『パスカルと身体の生』(大阪大学出版会、336頁)を刊行した。また、韓国のフランス語フランス文学会の「フランス文学における悪」と題されたシンポジウム(亜洲大学)に招かれ、「パスカルの政治思想における善と悪」という主題で発表した。 2)に関しては、モンテーニュ思想の読解に取り組む過程で、アントワーヌ・コンパニョンによる『エセー』解説書『モンテーニュと過ごす夏』(原文フランス語)の翻訳書を刊行した(邦題『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』白水社、宮下志朗との共訳)。また、近代西欧思想を専門とするジャンニ・パガニーニ教授(ピエモンテ大学)の来日講演「モンテーニュと近代懐疑主義」を翻訳した。本論は来年度中に国内の学術雑誌に掲載される予定である。 3)については、目下のところ、作業の準備過程にある。いくつかの関連文献に目を通したが、とりわけ、D・デコットによる『ポール=ロワイヤル論理学』の最新校訂版(Paris, Champion, 2011年刊)の長大な序文には瞠目した。最新の研究成果を盛り込み、これまで標準版とされていた版(Ed. P. Clair et F. Girbal, Paris, Vrin, 1965年刊)に比べて格段に充実した内容となっている。以後、本書に依拠しながら、翻訳・注解の作業に取り組む。 なお、このほか、『デカルト全書簡集』第3巻(知泉書館、2015年刊)の翻訳の一部を担当した。
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