研究実績の概要 |
本研究課題の主たる方向性は、1)パスカル人間学の総合的研究、2)パスカルとモンテーニュの影響関係の研究、3)『ポール=ロワイヤル論理学』の翻訳・注解、の3つである。 2016年度(平成28年度)は、1)に関して、単著『パスカル『パンセ』を楽しむ――名句案内40章』(講談社学術文庫)を刊行した。入門書の体裁ではあるが、『パンセ』の読解に関する新知見を盛り込んだつもりである。 2)に関しては、私が主宰する「フランス近世の<知脈>」研究会の第2回研究会にて、「パスカルの「気晴らし」(divertissement)とモンテーニュの「気をそらすこと」(diversion)」という題で発表した。また、同内容を、関西シェイクスピア研究会例会の特別講演でも披露した。英文学者との有益な対話の機会になった。 3)に関しては、D・デコットによる『ポール=ロワイヤル論理学』の最新校訂版(Paris, Honore Champion, 2011)に依拠して、第1部第4章「ものの観念と記号の観念について」、第1部第15章「語が正確に意味する観念に精神が付加する観念について」(以上、1683年版において付加された章)、第3部第19章「市民生活や日常の言論のなかで行われる誤った推論について」、第4部第15章「未来の出来事に対して行うべき判断について」の各章の翻訳・注解に取り組んだ。今後も本書の翻訳・注解作業に折を見て取り組むことにする。 このほか、ディドロ『サロン』の抄訳を『大阪大学大学院文学研究科紀要』に発表(連載第2回)し、ベネディクト・ゴリヨの論考「現代フランス文学におけるギリシア=ラテン文学の遺産」の翻訳・解題を『文学』誌(岩波書店)に寄稿するなど、多岐にわたる研究成果が得られた。
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