研究課題/領域番号 |
26370357
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中畑 寛之 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70362754)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 国際情報交換(フランス・ベルギー他) / ステファヌ・マラルメ / 書誌学 / 出版 |
研究実績の概要 |
2014年度はまず、マラルメが初めて出版した著作『令嬢たちの広場』(1862年刊、デ・ゼッサールとの共著) から、生前出版するには至らなかったが校正刷の存在する『さいころ投げ』、そして長い準備ののち死後にようやく刊行の運びとなったデマン版『詩集』(1899年) まで、20点を超える出版物の書誌作成を行なった。とはいえ、献本先や現存本の所在や状態など補足すべきデータはまだまだ多い。ひき続き資料と情報の収集に努め、研究期間内で出来る限り詳細な書誌を構築したいと考えている。同時代に出た書評等の二次資料の調査も同時並行して進めているところである。 本年度は70年代に上梓された幾つかの本、特にE・マネの挿絵を入れて豪華本として出版されたポー『大鴉』翻訳(1875年) について、出版人レスクリードとの手紙のやり取りなどを参照しながら、詩人による本作りについて考察を進めたが、論文に纏めるには至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基盤となる『ステファヌ・マラルメの本』を構成する書誌データについては、その骨格部分を完成することができた。研究実績の概要でも述べたとおり補足すべき情報には限りがないけれども、出版された本のそれぞれに関する書評情報も含めて調査は順調に進んでいると言えるだろう。 また、19世紀末フランスおよびベルギーの出版界に関しても先行研究を読み込み、さまざまな出版人の存在、両国の出版の大まかな状況を掴むことができた。 それらの知見を基に、ポー『大鴉』翻訳出版をめぐる出版人とマラルメのやり取り、つまり販売側と本を作る詩人側の戦略のズレや美学的・経済的齟齬など、物質としての本が出来上がっていく課程とその販売について論文を纏めたかったが、学内業務等に多くの時間を取られ未だ果たせていない。今後の課題である。
|
今後の研究の推進方策 |
『ステファヌ・マラルメの本』に掲載する書誌データおよび書評情報についてはひき続き、実地調査および資料収集と情報提供によって充実させていく予定である。フランスでの調査に十分な時間がとれるようであれば、マラルメ記念館に保管されている新聞・雑誌の切抜きをじっくり調べたいと考えている。詩人自らが Argus de la Presse という会社に依頼して継続的に集めさせたものというだけでなく、未だ手付かずの資料でもあるため、なんとしても着手したい仕事のひとつである。 昨年度は論文を書くことができなかったので、まずはポー『大鴉』翻訳出版についてこれまでの成果を纏めたい。また、1870年代に出されたもうひとつの記念碑的著作、やはりマネが挿絵を描いた『半獣神の午後』(1876年) に関しても考えたい。本作品はその後『独立評論』社版、ヴァニエ版が詩人存命中に出ており、それぞれの比較も行なう予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
19世紀末フランス・ベルギーの出版界に関する研究書を購入する予定額のうち約10万円が未使用となった。これは必要と思われる古書が見つからず購入できなかったり、フランス滞在中やネットで偶然見つけて私費で購入したことなどが主な原因である。 またフランスでの調査についても時間が取れず、短期間の滞在にせざるを得なかったことによって次年度使用額が生じてしまった。
|
次年度使用額の使用計画 |
古書に関しては必要なものを古書店等に予め依頼し、探本によって計画的に揃えていくようにしたい。『ステファヌ・マラルメの本』を書誌学的にも有益なものとするため、ほぼ同時代のポール・ヴァレリーやアンドレ・ジッド等の優れた書誌(Bibliographie des oeuvres de Paul Valéry, ; Bibliographie des écrits d'Abdré Gide, etc.)を購入し、それらを参照しながらデータ整理を行なうこととする。また、フランス・ベルギーの出版界に関する本についても、デマンの伝記 Edmond Deman éditeur, 1857-1918 ほか、個々の出版人を扱った研究書を入手する予定である。
|