研究課題/領域番号 |
26370362
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
石川 清子 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (30329528)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アルジェリア文学 / 移民女性 / アシア・ジェバール / ヤミナ・ベンギギ / 映画 / 翻訳 |
研究実績の概要 |
2年目に当たる今年度はマグレブ仏語文学の「女性・戦争・移民」のテーマについて、以下の研究を行った。 1)昨年逝去したアシア・ジェバールの作品見直し開始。没後の追悼イベントが数多く行われ、自身もパリのアルジェリア文化センターで行われた翻訳をテーマにした会に発表者として参加した。作家の急逝で全体の研究計画がずれる気はするが、その評価が固定し始めるとも言える。その他、ジェバール追悼の意味で研究会や学会での発表、講演、エッセイ寄稿など、この作家の作品全体を見直し、さらにいくつかのものは読み直す機会を得た。これをもとに、ジェバール作品の全体像を粗描していくことが重要だろう。本研究のテーマに照らし合わせ、十分意義のあることと判断する。 2)ヤミナ・ベンギギのテキスト作品と映像作品から見る、フランスにおけるアルジェリア系移民一世と二世の女性たちの表象を考察した。本務校の紀要にベンギギのこのテーマをめぐって論文を執筆した。映画『移民の記憶』とそのテキスト版の相違の意義を考え、さらに敷衍してベンギギ初期三部作(映画)とテキスト化の振幅の大きい営為を詳細に考察した。 3)ベンギギのテキスト作品翻訳を具体的に進めている。これは1)におけるジェバールの翻訳とも連携してくる。翻訳(ある[人の]言葉を別の[人の]言葉に置き換えること)とはまた、異なる時空、異なるアイデンティティーを獲得しつつ、他者の土地・言語に根を降ろし、そこで自らを確立し生存していくことである。ベンギギ『移民の記憶』の映画、テキストともに、マグレブ移民全体の「翻訳」であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標にあげていたヤミナ・ベンギギ作品のテキストに深く入ることができた。映画監督の面だけが強調される人物だが、ベンギギのテキストを文学として読むことを試みており、論文という形に残せた。また、翻訳のおおまかな下地を作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヤミナ・ベンギギ『移民の記憶』(同題の 映画とは別のインタビューとエッセイを合わせた単行本となった)を中心に据えて、女性・移民・ 戦争の3テーマから連鎖的に導き出される複数作品の共通性と個々の独自性を考察する。次いで、 アルジェリア戦争、90 年代内戦に関わる作品に目配りして、本テーマの発展性を考える。 さらに、それらの具体的発表手段として、研究会メンバーによるシンポジウムを行い海外研究者とのネットワークを作り、次いで、自身の研究を国内で知ってもらうために翻訳刊行の目処をつける。 より大きな目標として、これまで書いてきた論文を一冊の本にまとめる準備に取りかかりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料選定の時間的余裕がなく、書籍・定期刊行物・視聴覚資料(CD、DVD)を購入できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度余裕がなかった上記資料を選定し、購入する。特に視聴覚資料に重点を置く。
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