これまで疑わしいものとしてさほど顧慮されてこなかった子供の証言作品に焦点を当てることで、第二次大戦期フランスにおけるユダヤ人迫害の実像、とりわけ細々とした日常生活の断絶というその悲劇的側面が明らかになった一方で、そうした証言作品が、出自を偽ることによって生き延びた子供自身のアイデンティティの崩壊と再構築に基づいて織り成されていることから、言葉そのものの再考を促す性質を有することも明らかになった。こうして、子供の証言作品は、信用ならないどころか、戦後文学の少なくとも一部を考察する際の貴重な手がかりとなることが示された。
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