研究課題/領域番号 |
26370370
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
酒井 健 法政大学, 文学部, 教授 (70205706)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バタイユ / エロティシズム / 戦争 / 断章表現 / 哲学 / ヒロシマ |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は、20世紀フランスの思想家ジョルジュ・バタイユ(1897-1962)のエロティシズム論を彼の学際的な姿勢に沿って総合的に考察していくことにある。2014年度はとくに彼の芸術論、宗教論、暴力(戦争)論、そして哲学およびエクリテュールの問題に定位して、この考察を進めた。 具体的な成果としては、まず、内的体験としてのバタイユの戦争体験を、エロスに通じる欲望、そして断章表現の問題に着目してフランス語論文にまとめ、所属の文学部紀要に掲載した。他方で、法政大学言語文化センター発行の紀要には、初期の『ドキュマン』に表明されている哲学批判とその背後にみられる新たな哲学への期待を、後のバタイユの発言を参考にしながら解明した。エロティシズム論ももちろん念頭に入れてある。日本の一般文化月刊誌『ユリイカ』には、サドに関してもバタイユの解釈を踏まえながら、中世という新たな視点で論文を発表した。 またバタイユの戦争論として重要な「ヒロシマの人々の物語」を翻訳し、長文の解説を付して刊行した。さらにフランスの大学(ストラスブール大学)が主催した国際シンポジウム「戦争と体験」に参加して、バタイユとユンガーの思想上の異同を論じる発表をおこなった。この発表をもとにした報告論文は2015年度中にストラスブール大学のWEB上に公表される予定である。またフランスの出版社クラシック・ガルニエ社の哲学雑誌ALKEMIEのエロス論特集号にバタイユのエロティシズム論を新視点で再解釈する論文を寄稿し、査読をへて掲載の運びとなった。こちらは2015年度の秋に公刊される予定である。 バタイユのエロティシズム論はたいへん裾野が広いが、今年度の研究によってその問題圏の本質的な諸点について新たな光を当てられたと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内と国外において研究発表の場を積極的に求め、いずれの場においても発表の成果を文字として公表できる機会を得た。その意味での達成感はある。 もちろんバタイユのエロティシズム論を人間文化の視点に立って、多角的に検討する本研究において、2014年度の研究は今後の礎にほかならない。大きな文化論の視野に立ってさらに研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究発表の場を日本の内外に求めて、成果を広く公表していく予定である。狭い意味のエロス論ではなく、西欧の文化全体、そしてバタイユ以後の現代思想の展開を視野に入れて、エロティシズムを論じていきたい。 具体的には、フランスの雑誌への投稿、日本でのシンポジウムの参加、そして所属の大学でのシンポジウムの開催を予定している。
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