研究課題/領域番号 |
26370370
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
酒井 健 法政大学, 文学部, 教授 (70205706)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バタイユ / エロティシズム / ブランショ / キニャール |
研究実績の概要 |
今年度の研究は、①バタイユのエロティシズム思想の意義をバタイユ自身の思想のなかで検討すること、そしてまた②その後の思想家との関連において検討することの二つに向けられた。 まず①に関しては、成果としてフランスの出版社classiques garnier社刊行の哲学雑誌Alkemie第15号(2015年7月号)に査読を経て論文"Georges Bataille, le cheminement de l'erotisme"を発表し、また日本においてバタイユのテクスト"L'apprenti sorcier"の邦訳「魔法使いの弟子」を景文館書店より訳者解説を付して単行本刊行した。前者の論文ではバタイユのエロティシズムの変化を1930年代と50年代で対比して新たな考察を試みた。後者の邦訳においてはバタイユの恋愛論という角度でこのテクストを紹介し、既存の読み方とは異なる解釈を付け加えた。 ②に関しては、バタイユからモーリス・ブランショ、パスカル・キニャールへ思想の変遷を検討し、また他方で日本の詩人、作家との異同も検討した。論文としては雑誌『ユリイカ』2016年1月臨時増刊号に「夜の歌麿ーブランショ、バタイユ、キニャールから」を発表し、講演では書店神楽坂モノガタリにおいて「文学者と恋愛ー漱石、カフカ、バタイユ」を行い(2015年12月9日)、また法政大学言語・文化センター主催のシンポジウム「マテリアとしての記憶」を開催して(2015年12月20日)、バタイユの根底にある思想を多方面の書き手に接続した。さらに2016年1月21日にはフランスのパリ大学ナンテール校で開催された国際シンポジウム「バタイユ、ブランショ、クロソウスキー」において発表"Le regard interdit de la nuit et ses consequencs contemporaines "を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フランス語論文を哲学思想に特化したフランスの雑誌に投稿し、査読を経たのちに掲載の運びになったことは、研究成果を海外に広く問う意味で当研究の大きな進捗であった。またフランスの国際シンポジウムで発表をおこなえたのも、同様の意味で有意義だった。他方で日本において論文発表、翻訳本の出版、講演会、シンポジウムを積極的に実施して、多くの日本人に研究成果を伝達した。 自分の持てる力は十分に発揮できたと思うし、年度当初の予想を上回る成果をあげることができたと確信している。これに慢心することなく、成果を来年度へつなげていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度においても論文執筆と学会発表を基本活動にして研究を進捗させていきたい。 すでに法政哲学会(5月28日開催)で「フランス現代思想とInfantia の問題――ジョルジュ・バタイユとその後の思想家たち」の題目での発表が予定されており、エロティシズムの問題にも新たな考察を向ける所存である。また6月19日には専修大学で発表を予定しており、そこでも最新の成果を問うてみたい。所属大学の二つの紀要(『文学部紀要』と『言語と文化』)にも論文を掲載し、またフランスの学術誌への投稿も考えている。そしてできれば著作というかたちで3年間の成果をまとめて、公に開示したいと思っている。
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