研究課題/領域番号 |
26370374
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
奥 純 関西大学, 文学部, 教授 (00152413)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自伝と物語 / ロブ=グリエ |
研究実績の概要 |
今年度は3年計画の2年目であった。前年度はロブ=グリエの後期作品に見られる独特の語りの構成が持つ現代文学史上の意義に関する研究を進めたが、今年度は前年度の研究結果を踏まえて、後期作品群への出発点である中期の小説『ニューヨーク革命計画』の物語の舞台となったニューヨーク市街の実地調査を行った。調査の結果は予想を大きく超えるものがあり、この作品自体の理解のみならず、後期作品群の代表作である自伝的作品の理解について、新しい見解につながる重要な知見を得ることができた。具体的には、ロブ=グリエが自ら訪れた街をどのように抽象化して物語世界として構成しているのか、その顕著な例を見て作品化のプロセスを良く理解できたことであるが、この研究結果の概要については、平成27年12月19日に関西大学で開催された関西大学フランス語フランス文学会で口頭発表を行い、この発表に資料や作品分析を加えて増補改定し「『ニューヨーク革命計画』とニューヨーク」として論文にまとめ、平成28年3月発行の『仏語仏文学』(関西大学フランス語フランス文学会発行)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度得られたロブ=グリエの作品に見られる独特な語りの構造に関する知見に、今年度得られたロブ=グリエが自分の経験と記憶を物語世界に展開してゆく独特な方法に関する知見を加えて、いよいよ後期作品の代表作である自伝的作品を分析する準備が整った。自伝的作品の第1作『戻ってくる鏡』の分析にはすでに取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は研究計画の最終年度である。当初の研究計画では本年度はイスタンブール市街の実地調査を行なう予定であったが、フランスのブルターニュ地方の都市ブレスト市街の実地調査に変更する。ブレスト市街の調査は自伝的作品群の研究を進める中で次第に必要性が高まってきたものである。当初予定していたイスタンブール市街の調査は、トルコ国内でのテロ事件頻発を受けて危険を回避するため断念せざるを得なくなったのであるが、これによって研究全体の詰めの部分に影響が出る可能性があり、残念極まりない。しかし、今はとにかくできることに集中することにして、後期作品群の中核をなす自伝的作品群の構造の分析とその意味の解明に全力を集中することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年7月から9月にかけて勤務先の関西大学より在外研究の機会を得てアメリカ国内に滞在しており、そこから科研の研究計画にあるニューヨーク市街の現地調査に赴いたので交通費を削減することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
フランスの地方都市ブレスト市街地の実地調査と合わせてパリで資料収集を行うための旅費及び書籍を中心とした資料購入費に充てる。
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