本研究では1940年代のテキストや講演を分析することによって、第二次世界大戦中から戦後にかけてアンドレ・ブルトンが一つの社会思想を構築していくことを示した。彼の思想の前提となっているのは、ある一つの精神のモデルである。それはロマン主義的理想主義を抱き、社会変革を目指す精神は文明への対抗として最終的に秘教を見出すというものであった。彼自身もまた、この精神の発展過程を経ているのであった。 一方、この時代に彼が取り組んだ神話の主題や善悪といった倫理的問題、さらに現実に参加した「世界合衆国」運動などにおいても、この特殊な世界観が反映されていることを証明した。
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