研究課題/領域番号 |
26370377
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鳥山 祐介 千葉大学, 文学部, 准教授 (40466694)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロシア文学 / 西洋史 / 文学論 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
平成27年度にも引き続いて資料収集や情報の整理、国内外の研究者の交流を行い、8月には国際学会で研究報告を行った。 同年4-8月には、前年度のモスクワ滞在の際に収集した資料のうち、特に対ナポレオン戦争で活躍した軍人の一人、フョードル・グリンカによる旅行記や論稿に関する分析を進めた。8月に幕張で開催された第9回国際中東欧研究協議会(ICCEES)世界大会においては18-19世紀ロシアの旅行記に関するパネルの組織者となり、同時に`Patriotic War’ and `Foreign War’: Fyodor Glinka’s `Letters of a Russian Officer’ and Travel Accounts during Napoleonic Wars'. (「祖国戦争」と「国外戦争」:フョードル・グリンカ『ロシア人将校の手紙』と対ナポレオン戦争期の旅行記)と題された報告を行った。この内容については論文にすべく現在準備中である。また、本大会でロシア、韓国など各地の研究者と共同作業を行ったことで研究交流の範囲が広まり、特に韓国の研究者とは平成28年度も共同研究の予定が進んでいる。 同年秋から冬にかけては、ロシアにおける空間表象の問題と密接なかかわりを持つ美学概念「崇高」に関する研究に携わり、平成14年に発表した論文に新たに収集した資料や最近の研究成果に基づいた大幅な加筆を行い、論文「ロモノーソフと修辞学的崇高――十八世紀ロシアにおける「精神の高揚」の様式化」を執筆した。この論文は、書籍『18世紀ロシア文学の諸相』の中の一章として、平成28年3月に水声社より刊行された。 平成28年3月にはヘルシンキのフィンランド国立図書館、モスクワのロシア国立図書館、文学芸術文書館でさらなる資料調査を行い、ロシア国立人文大学でプーシキンに関する簡単な研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以前より予定していた8月の国際学会において無事に研究成果の報告を行うことができた。また、この学会および平成28年3月のモスクワ滞在において、報告や情報交換の場を持てたことは今後の研究にとって有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、これまでに得られた研究成果に基づき、18世紀末から19世紀初頭の対ナポレオン戦争期の空間認識に関して、同時代の旅行記や文学作品を用いて研究を進める。10月には、サンクトペテルブルクのロシア科学アカデミーロシア文学研究所において開催されるカラムジン没後250年記念学会での報告が予定されており、ロシアの地理認識と深く結びついたヴォルガ川の文学的イメージについて、これまでの研究成果を発展させ報告する予定である。国内外での資料収集、専門家との討議も引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は研究開始後に勤務先本部の用件でモスクワ滞在をすることになり、当初予定していたモスクワへの資料調査のための出張を行う必要がなくなったため、多くの未使用額が生じた。今年度の海外出張は3月に行ったが、勤務先の用務との関係であまり余裕のある日程は取れず、前年度の未使用額を大幅に使用するには至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍や印刷代などの資料費に充てるほか、10月のサンクトペテルブルク出張に充てる予定である。また可能なら9月の上海における国際学会や、海外研究者の招聘にも充てる予定である。
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