研究課題/領域番号 |
26370379
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
西岡 あかね (秋元あかね) 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30552335)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ドイツ文学 / 比較文学 |
研究実績の概要 |
本年度は研究の前提となる大枠のモチーフ研究をまず行った、具体的には、個人崇拝(スターリン崇拝)の文学的表現についての考察を進めた。ドイツにおけるこの文学的現象については、ジャーナリスティックな関心の対象になることはあっても、テクスト分析や文学史研究の対象にはあまりなってこなかった。体制としてのスターリニズムと文学の関係に関しても、雑誌『テクストと批評』シリーズの特集「文学とスターリニズム」(ミュンヘン、1990) など、個別のアスペクトを論じた論集がいくつかあるに過ぎない。そこで、本年度中にベルリン国立図書館で20 年代から40 年代の文学を中心に、これまであまり知られていない、スターリンやソヴィエトを題材としたプロレタリア文学のテクストを収集することを当初は計画していたが、体調不良のために海外出張が不可能となったため計画を変更し、まずは個人崇拝の文学的表現のルーツとなる、アヴァンギャルドの文学における「新しい人間」像の表現に焦点を当てて研究を行い、その結果を国内で開催されたシンポジウムで発表した。また、プロレタリア芸術におけるスターリン崇拝の文学的・美術的表現についても、既に収集した資料を基に分析を進めた。この結果は、ドイツでの今後の資料収集にも役立てると共に、来年度以降、順次発表したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画ではベルリン国立図書館で資料収集を行う予定であったが、この計画については変更を余儀なくされた。しかし、計画変更後、国内でできる研究に専念することで、一定の成果を上げことができたと同時に、今後、研究を進めてゆくうえでの予備調査を終えることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度に行うことのできなかった資料収集とその分析を行い、その結果をこれまでに行った理論的考察及びモチーフ研究によって得られた知見と照らし合わせることで、これまでの研究を深化させる。 また、研究の第三部に関して、亡命時代から戦後のヨハネス・ベッヒャーについて研究を進める。ベッヒャーに関しては長らく、初期の表現主義作品のみに目が向けられ、晩年の作品は現在でも十分に研究されているとはいえない。資料もかつてDDR で出版された以上のものは未だ整備されていない。そこで、先に述べた資料収集と合わせて、ベルリンの芸術アカデミーでベッヒャーの遺稿の調査も行う。特に戦後、ドイツ詩のアンソロジーを編纂した際のメモや、新国歌執筆をめぐる状況のドキュメントを調査し、彼の「ドイツ文化」観を明らかにしたい。同時に、DDR の文化実践において「国民詩人」ベッヒャーがアイコン化される様子とそのメディア戦略についても論じたい。また、この研究と並行して雪解け前のDDR 文学も取り扱う。各研究の成果は順次、論文の形で発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)当初計画していた海外出張が、病気のために中止せざるを得なくなったため。 2)当初はドイツ語での研究成果発表を考えており、ネイティブによる校正費用を計上していたが、成果発表を日本語で行ったため、この費用の支出が必要なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
1)今年度も海外での資料収集と調査を計画しているので、その際に旅費として使用することを計画している。 2)今年度は研究成果発表をドイツ語で行う予定なので、その際に校正費用として使用する予定である。
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