研究課題/領域番号 |
26370380
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
磯崎 康太郎 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (30409502)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ドイツ文学 / 美術史 / 風景画 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀以降に風景画を描いたドイツ文学の作家を取りあげ、かれらの風景が相互の比較考察を進めるとともに、文学作品に風景描写として彫琢された文章表現と色彩表現との関連性から、個々の表現媒体を超えた風景というトポスの意味を明らかにするものである。そしてこの点を踏まえて、ペンと絵筆という二通りの表現手段を有した作家兼風景画家について、時代的推移とは異なるかれらの系譜化を図ることを目的としている。 平成27年度は、とりわけ重点的にヘルマン・ヘッセの風景画および文学作品を検討した。その成果として発表した論考では、彼の転機となる第一次大戦前の最後の文学作品『ロスハルデ』を中心に考察している。この長編小説の主人公である画家による作中の画作は、19世紀の風景画の伝統とともに20世紀現代芸術の端緒とそこでの試行錯誤が反映された様相を呈している。同作は以後、本格的に画業を開始するこの作家の絵画的「習作」ともなる文学作品であると考えられる。さらに、平成27年度は、次年度に重点的に取り組むゴットフリート・ケラーの風景画および文学作品についての基礎研究として、作品の鑑賞と読解を進めるとともに、受容研究資料の調査も進めた。同時代の作家を取り巻く社会背景の考察として、ケラーやシュティフターとも関わりの深い作家フリードリヒ・ヘッベルを対象にした学会発表も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で対象とする4人の作家兼風景画家のうち、3人については概ね考察し、その成果を論文として発表することができた。これは本来の計画通りである。現地での調査は、平成28年3月のスケジュール調整がつかなかったため、予定を後倒しにして、平成28年夏に行う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度夏にずらした現地調査を有意義なものとするため、まずはそれまでの基礎研究を充実させ、夏以降に本研究課題全体をまとめる段階に入りたい。万が一研究計画が滞る場合には、ヘッセ博物館やシュティフター研究所等の研究員に相談し、資料面や発想面での打開策を見出すことを推進方策としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査として予定していたスイスおよびドイツへの14日間の出張を、校務等との兼ね合いで延期することになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に延期したスイスおよびドイツへの14日間の出張を、平成28年度に実施する。
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