研究課題/領域番号 |
26370385
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊池 正和 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30411002)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イタリア近現代演劇 / 未来派 / ヨーロッパ演劇 / 演出・演出家 / Luigi Pirandello / Achille Ricciardi |
研究実績の概要 |
1.学術論文「リッチャルディの「色彩の演劇」と未来派演劇におけるその影響について」『言語文化研究』第43号(大阪大学大学院言語文化研究科紀要) 2017年3月31日 イタリアにおいて初めて照明や色彩に演出上の価値を付与したと考えられるリッチャルディの「色彩の演劇」と、ほぼ同時代に劇作法や舞台装飾のアプローチからやはり色彩を介して舞台改革を行った未来派演劇とを取り上げ、劇的要素としての色彩の発見が、イタリア近現代演劇における演出の成立過程において決定的な役割を果たしていた可能性を検証した。 リッチャルディの「色彩の演劇」とは、ドラマの精神や登場人物の心理といった不定形なものとその変化を、内側からの彩色で視覚化・外在化するといった自律的な演劇体系であった。その実践が不首尾に終わったとはいえ、リッチャルディのこの理論は根本的な有効性と後の舞台改革への萌芽に満ちたものであり、クレイグやアッピアなど同時代の演劇改革理論にも伍するものであった。色彩は登場人物の精神を視覚化し、劇のパトスを外在化することで、台詞や仕草の表面には表れない内的世界の生成を表現することを可能にしたのである。 また、こうしたリッチャルディの理論に影響を受けつつ、色彩の表現を特異な劇作法や造形性と組み合わせることで、より演出行為の実践へと近づけたのが、マリネッティのシンテジやプランポリーニやデペーロの造形的・抽象的な舞台装置といった、未来派演劇における数々の実験であった。 こうした未来派演劇の実験の意義と影響を跡付けることで、イタリアにおける演出の成立過程を明らかにするという本研究課題の目的に近づくことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の最終年に当たる平成28年度は、イタリアにおける近代的演出法の成立に寄与した「国立演劇アカデミー」における俳優や演出家の育成を主な研究対象とし、同アカデミーに併設されている「ジョヴァンニ・マッキア研究センター」での調査を予定していたが、同センターとの日程調整が難航し、最終年度内に現地調査が叶わなかった。その結果、調査結果をまとめて論文として発表する時期が来年度に送れると判断して、補助事業期間の延長を申請した。 また、平成28年度は上記の研究と並行して、同時代の未来派演劇並びにグロテスク劇の劇作法と演出行為との接点を探る予定であったが、未来派演劇の調査に時間がかかり、グロテスク劇の劇作法に関しては予備調査の段階に留まってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに実現できなかった「国立演劇アカデミー」及び「ジョヴァンニ・マッキア研究センター」での調査を夏季休暇中に実現させ、そこにおける演出家・俳優の養成法を中心に、イタリア演劇における近代的演出家の誕生のプロセスを解明することを第1の課題としたい。 また、前年度までの研究の結果、未来派演劇における劇場空間の改革が、後のイタリアの演出家の演出法に多大な影響を与えたことが解明できたので、その分野についてもさらなる検証を加えていきたい。 上記2点に関して研究の成果を学術論文の形で発表するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の最終年に当たる平成28年度は、イタリアにおける近代的演出法の成立に寄与した「国立演劇アカデミー」における俳優や演出家の育成を主な研究対象とし、同アカデミーに併設されている「ジョヴァンニ・マッキア研究センター」での調査を予定していたが、同センターとの日程調整が難航し、最終年度内に現地調査が叶わなかった。その結果、調査結果をまとめて論文として発表する時期が来年度に送れると判断して、補助事業期間の延長を申請した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度中に上記の「国立演劇アカデミー」及び「ジョヴァンニ・マッキア研究センター」での調査を行い、資料の収集に努めるつもりである。その際の資料整理の人件費として5万円程度を、その後、本研究課題の成果を纏め上げ、その還元を予定しているが、そのための費用として、学会発表における国内旅費と論文抜き刷り印刷費として計10万円ほどを使用予定である。
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