研究課題/領域番号 |
26370386
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 健二 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (00283838)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ラテンアメリカ文学 / チリ文学 / 前衛詩 |
研究実績の概要 |
研究計画に基づきエンリケ・リンにおける反詩の実践とその影響を分析するに当たり、必要な資料の特定とその入手作業を中心に進めた。具体的には過去10年の米国博士論文におけるテーマ設定や資料の扱い方を分析し、その結果、リンの詩などの作品分析から美術系の批評言説をも対象とした論考が増加傾向にあることが分かり、それに必要な先行研究等の資料を特定したうえで、平成28年3月15日から27日の日程でチリ国サンティアゴに出張、現地の国立図書館公文書保管所等を中心に資料収集を行った。詩全集が刊行されていないリンに関しては韻文テクストの全体像を確定しておく作業も急務であったが、ディエゴ・ポルタレス大が続刊中の作品集を入手し、関係する美術批評言説をまとめた最新の資料集も入手した。そのうえで第一詩集『暗い部屋』(La pieza oscura.)における反詩的な要素の分析を進め、リンの詩作におけるアイロニーが先行するニカノール・パラのそれとは異なり極めて「私的な要素(lo íntimo)」を巡るある種の《反公共》の詩学に貫かれているということが判明した。創作者の私的なものを中心として既存の公共美学を攻撃対象とするこうした前衛文学特有の姿勢は、リンによる美術批評言説にも見られる特徴で、リンにおいては創作と批評言説との間に密接な関係があることも判明した。 いっぽう前年度に研究を進めたニカノール・パラについてはその第一詩集『詩と反詩』(Poemas y antipoemas.)の文学史的な位置づけを論文「躍動するアイロニー―ニカノール・パラ『詩と反詩』に関する一考察」(『Estudios Hispánicos』大阪大学外国語学部スペイン語部会、平成28年3月30日、pp.39-64)にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は資料収集とその分析、さらに前年度に収集した資料分析の結果を論文として刊行する作業に時間がかかり、予定していたリンに関する論文の執筆が先送りになってしまった。これらについては最終の平成28年度に必ず実績として達成することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究計画に従って、主としてエンリケ・リンの諸言説に関する論文執筆と研究発表を行なう。またニカノール・パラやその後の反詩の展開をにらんだより広い「反詩の全体像」の把握を目指し、その調査結果を論文にして刊行することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
チリ国出張中に国際宅急便で送付した資料が年度内に勤務先大学に着かなかったため、該当する資料の執行費が若干余る形となった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の資料が4月上旬に着いており、その費用として執行する。
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