チリの詩人ニカノール・パラ(1914-)は1954年の第一詩集『詩と反詩』以降、ラテンアメリカ現代詩を様々な形でリードし続けてきた。反詩とは、平明で口語的な語句を用い、卑近で個人的なテーマを扱うというスタイルであるが、同時に、堅苦しい伝統的文学や硬直した《詩的なもの》をユーモアやアイロニーをこめて嘲笑する創作姿勢でもある。いっぽうその反詩を当初から支持した同じチリのエンリケ・リン(1929-88)は、ロマン主義的で古風な作風を維持しつつも、独自の前衛的スタイルを確立し、パラが始めた反詩という一つの系譜に新たな路線を加え、軍政期以降の若い作家たちにとっての精神的支柱となっていることがわかった。
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