研究課題/領域番号 |
26370392
|
研究機関 | 稚内北星学園大学 |
研究代表者 |
岩本 和久 稚内北星学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40289715)
|
研究分担者 |
大平 陽一 天理大学, 国際学部, 教授 (20169056)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 外国文学 / ヨーロッパ文学 / ロシア東欧文学 / 国際研究者交流 / ロシア |
研究実績の概要 |
本研究は19世紀後半から現代までのロシアにおけるスポーツ表象を分析し、ロシア社会におけるスポーツの意味や機能を検討するものである。また、国家と個人の対立の中で揺れたロシアのスポーツ表象の系譜を明確化し、ロシア文学・文化史の再構築をはかるものでもある。 2014年度は主に文学領域を対象に調査・分析を行い、ロシアの「スポーツ文学」の系譜を明らかにした。具体的にはトルストイ、クプリーン、ナボコフ、オレーシャ、カッシーリ、ナギービン、トリーフォノフらの作品を対象に、社交、健康の増進、運命との対決、国家への奉仕、日常の超越、など、スポーツが担ってきた意味を考察した。その一部は『SLAVISTIKA』30号に発表し、またユジノサハリンスク経済法律情報大学における国際シンポジウムにおいても報告を行った。北海道大学スラブ研究センターにおいては、「雪どけ」期のスポーツ映画と作家の関わりについて、客員研究員セミナーを行った。 現代ロシアにおけるスポーツ文化についての調査も行い、特に2014年の冬季オリンピック、同年から開催されたF1ロシア・グランプリ、2018年に開催が予定されているサッカーのワールドカップの会場となっているソチの視察を行った。この調査により、全体主義体制下の1930年代に整備された古いリゾート地に、新しいスポーツ文化の層が加えられている状況、そこに浸透している国家主義的な要素を明らかにすることができた。研究分担者である大平陽一はまたロシアの現況について、人気スポーツであるサッカーが総合型スポーツクラブから分離されていくという変化を報告した(「ソ連崩壊後のスポーツクラブ」)。 その他、スポーツ社会学を専門とする侘美俊輔(稚内北星学園大学准教授)に研究協力を依頼し、適宜、アドヴァイスを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した計画(資料の調査・購入、セミナーの開催、成果の発表、海外調査)は全て実施され、ロシアのスポーツ文学の系譜やそこで語られているスポーツの意味づけが明らかにされた。それらについては、雑誌やシンポジウムにおける成果報告もなされている。 また、ソチの現地調査においては、当初は予期されていなかった都市の意味の重層性、すなわちスターリン期からポスト・ソ連期にかけての歴史的な変化の連なりを現在も観察できること、都市の各地区がさまざまな時代の特徴を示していること、が明らかにされた。 これらのことを踏まえるならば、「おおむね順調に進展している」と判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2014年度は文学を対象に研究を行ったが、2015年度以降は美術、映画といった視覚表象の領域にも対象を拡大し、ロシア文化におけるスポーツ・イメージについての総合的な理解を目指す。 また、2014年度は冬季オリンピックの開催地ソチについての現地調査を行ったが、1980年のオリンピック開催地であるモスクワのスポーツ施設やメモリアル施設の在り方についても調査を行い、ソチの場合と比較する。 2015年にはICCEES(国際中東欧研究学会)の世界大会が幕張で開催されるが、そこにロシア人研究者(アイテン・イグナトヴァ氏を予定)を招聘し、国際的な学術交流をはかる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が骨折、入院とリハビリが必要となり、予定していた海外現地調査への参加が困難になったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
2015年度以降に改めて海外現地調査を実施する。
|