本研究は19世紀後半から現代までのロシアにおけるスポーツ表象を分析し、ロシア社会におけるスポーツの意味や機能を検討するものである。また、国家と個人の対立の中で揺れたロシアのスポーツ表象の系譜を明確化し、ロシア文学・文化史の再構築をはかるものでもある。 2014年度は主に文学領域を対象に調査・分析を行い、ロシアにおけるスポーツ文学の系譜を明らかにした。これについては翌年、『スラヴ研究』に研究ノートを掲載している。2015年度は現代ロシア美術を対象とした調査・分析を行い、死や再生といった生命力への関心を明らかにした。 2016年度は前年度の美術に関する調査報告を、『稚内北星学園紀要』に掲載した。また、ロシアにおけるスポーツの記憶の継承の在り方について、モスクワのスポーツ省に併設された博物館やギャラリー「ヴィンザヴォート」で開催されたポスター展、あるいはモスクワ五輪の際に開発されたクルイラツコエ地区での現地調査を行った。その成果の一部としてクルイラツコエ地区について、この地区を舞台とした現代ロシア作家アントン・ウトキンの小説をも参照しながら研究会で報告を行い、現代の都市生活とスポーツ施設の調和について論じた。3月に稚内で開催されたこの研究会ではまた、分担者の大平陽一がロシアのサッカーの歴史について、建築研究者の本田晃子がモスクワ五輪のスタジアム建築について報告している。 なお、3年の研究期間を通じて研究会を2回、国際学会でのパネル報告を1回実施した他、関連する研究会やセミナーに各年度1回ずつ計3回参加した(2016年度は北海道大学で開催された「スポーツ・ビジネスの国際比較」研究会において大平がサッカースタジアムの理念の変化について報告し、岩本がコメンテーターを担当した)。
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