研究課題/領域番号 |
26370396
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
久野 量一 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70409340)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | キューバ / プエルトリコ / 植民地 / ソ連 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、以下の3点から研究を推進した。①研究課題に関する資料収集、②プエルト・リコとキューバ双方の宗主国交代期における文学作品の検討、③現地調査(キューバ)。 以上の研究活動を通じ2本の論文を執筆、刊行した。一つ目の論文では、プエルト・リコにおける宗主国交代期である1898年の米西戦争とその帰結をトピックとしてとりあげている作品をいくつか検討した。また二本目の論文では、キューバの文学から、宗主国の交代期と見てよい1989年のベルリンの壁崩壊以降、いわゆる「ポストソ連時代」の文学作品を概観した。 前者(プエルト・リコ)においては「国民文学」がメタフィクション化する(いわゆる入れ子構造のテキストになる)ことに注目し、これが「国民国家」ではない地域の文学特有の現象のひとつであると見なした。また、後者(キューバ)では、ソ連時代を振り返る文学作品が、キューバにとっての未来がどうありうるのかの視点を提供している可能性について検討した。 プエルト・リコとキューバは、かたやアメリカ合衆国、かたやソ連と、どちらも強大な「宗主国」の支配下の「植民地」と見ることができる。プエルト・リコが依然として主権共同体ではなく、したがってその状況下で描き出される「プエルト・リコ性」は、共同体の内側に制度として建立されるのではなく、外側へ出ていかざるをえず、常に薄められるものとして構想される。一方「国民国家」キューバでは、ソ連文化の流入は「キューバ性」に付加される新しい要素として歓迎するものとして構想される。 今後の研究ではこの両者の相違について理論化、定式化することを目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は2本の論文を執筆し、それぞれ年度内に刊行され、口頭発表については、研究会で2回行なった。また現地調査も行ない、現地研究者とも意見交換をすることができた。以上の研究成果の公表からして、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はカリブ近隣の他の文化・言語地域との比較を踏まえること、また、ドミニカ共和国の事例の検討に入る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度については冬に短期間の海外調査を入れたが、訪問国の物価情勢を踏まえると高額になる恐れがあったため、宿泊・日当は自費で充当した。よって27年度予算が翌年度に回されることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度の研究計画に予定している海外調査について、時期を見極めつつ2度の出張を行なうこととして、適切に支出したい。
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