研究課題/領域番号 |
26370398
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
井戸田 総一郎 明治大学, 文学部, 専任教授 (40095576)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニーチェ / 韻文 / 文献学 / 模倣 / 継承 / パロディア |
研究実績の概要 |
バンベルク大学ドイツ文学科において2017年5月、3回にわたってニーチェに関する以下のドイツ語による講演を行った―1)Nietzsche und die Lyrik-Der Internationale Nietzsche-Kongress in Naumburg、2)Stil und Einsamkeit ー Poesie und Prosa、3)An Goethe. Spurenlese einer poetischen Genese。いずれも、ドイツにおける近年のニーチェ研究の動向を踏まえたものであり、大きな反響を得ることができ、ディスカッションを通じて今後の研究展開にとって重要な示唆を受けることができた。 2018年3月書肆心水社から『模倣と創造-哲学と文学のあいだで』(井戸田総一郎、合田正人、大石直紀共著)を刊行、以下の第一章を執筆した―第1章 模倣・創造・書記行為――ニーチェの文体と孤独(Ⅰ模倣とジェラシー、Ⅱ継承と断絶、Ⅲパロディア――模倣と創造、Ⅳ文体と孤独)。 また、ドイツの Walter de Gruyter 社から、ニーチェ研究の新シリーズ Nietzsche Lektuerenの刊行が始まることが決定しているが、最近のニーチェ研究をリードしているクリスティアン・ベネ(コペンハーゲン大学教授)とアンドレアス・ウルス・ゾマー(フライブルク大学教授)の推薦で、井戸田はこのシリーズの学術顧問に就任することになった。このことは、本研究が世界のニーチェ研究の新しい展開に大きく貢献できることを証明している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニーチェにおける詩文の形式、文体構成に関する精度の高い基礎研究は終了し、その成果をもとに、これまでドイツでも十分に研究されているとは言い難い詩集 “Idyllen aus Messina”の総合的分析を始める段階にきている。詩とアフォリズムの関わりという点からみて、”Idyllen aus Messina” とその前に執筆された “Morgenröte” との関わりは重要である。前作の最後のアフォリズムを次作の導入にすることでテキスト内関連を生み出すというニーチェの構想は、”Idyllen aus Messina”以後の出版形態を考察する上で示唆を与えるものである。ニーチェの後期の一連の著作の刊行に、プロジェクトと言えるような一貫した指向性を認めることができるか否かは、今後の国際的なニーチェ研究においても重要なテーマになるものである。
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今後の研究の推進方策 |
“Idyllen aus Messina”の総合分析を高い水準で進行させるために、クリスティアン・ベネとアンドレアス・ウルス・ゾマーとの密接な連携がこれまで以上に重要になる。2018年1月に、“Idyllen aus Messina”の新しい読解の成果をフライブルク大学において紹介し、ディスカッションを通して研究を深化させることが決まっている。また、ニーチェの詩の最後の試みとなる”Dionysos-Dithramben”に関しても、本年度中に分析に着手する。“Idyllen aus Messina”、 ”Dionysos-Dithramben”、この二つの詩の試みについては日本ではこれまで詳細な研究は存在しておらず、本研究はドイツの最新の研究成果を踏まえて日本のニーチェ研究の進展に貢献していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
バンべルク大学で2017年秋に行うことになっていた講演が延期された結果、そのための旅費が未使用になった。
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次年度使用額の使用計画 |
2018年6月終わりに、上記の講演を行うことが決定しており、バンべルクに出張する旅費として支出する。
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