今後の研究の推進方策 |
当初、前次研究まで作成を終えた『アルハンゲリスク福音書』『オストロミール福音書』『ムスチスラフ福音書』『サバの本』カノン部分(Sav2)のパラレル・テクストに、今次作成のVat.Pal.およびSav全体(Sav1, Sav2, Sav3)のパラレル・テクストを加えて5写本のパラレル・テクスト作成を企図したが、これをとりやめ、今次はVat.Pal.とSav1, Sav2, Sav3のパラレル・テクスト作成に留める。その理由として、1) Vat.Pal.テクスト刊本の難読部分に多くの疑問点がある、2) これを確認する術がない(А.Джурова, Украсата на Ватиканския кирилски палимпсест, Vat.gr. 2502, 2002, Софияにはファクシミリを載せるが、パリンプセスト故、ほとんど読めず)、よって結局ブルガリア刊本に依拠するほかはない。3) 文献学的正確さを期する立場から、Vat.Pal.刊本を暫定的テクストと認めて、これをSav全体とのパラレル・テクスト作成に留めるのが妥当と考える。 以上から、最終年度ではVat.Pal.に上記色分けを施した上で、後に四福音順に置き換え、これを処理を終了したSav全体に対置させてパラレル・テクストを作成する。同時に両者を、さらに既存の上記4本対比テクストとも比較検討を行ない、とりわけロシアのアプラコスとの関連性を重視しつつ、課題究明にあたる。さいごに報告書を作成して関係する研究者や研究機関に配布し、得られた知見の共有化をはかりたい。
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