『ヴァチカン・パリンプセスト・キリル・アプラコス』を四福音順に置き換え、『サバの本』全体に対置させてパラレル・テクストを作成した。ロシアのアプラコスとの関連性を重視しつつ研究し以下の知見を得た。すなわち、ルーシにおけるアプラコスの写本制作はブルガリアで先行あるいは併行して行われていた写本制作と密接に関係し、かつブルガリアの単数の写本に遡源するのではなく、複数の写本テクストさらに伝統的に学習されストックされていた語彙・語法群からも意図的に選択されて、ルーシの写本は制作されていた。これらルーシの初期の写本でのテクストは、古代ロシア文語成立に重要な枠組みを与え、かつ体現しつつ展開してゆく。
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