本研究はおもに1820年代から1840年代のロシアにおける「哲学詩」の展開と運動をその対象とし、「哲学と詩の融合」を目指したこの運動の文化的意義について、哲学、宗教、歴史、政治、教育などの観点から総合的に分析している。詩人たちや哲学サークルの活動、批評などを詳細な考察を通して、この時代のロシア文化全体において知識人たちが直面した「理想と現実の乖離」という大きな問題を浮かび上がらせることができた。また、この問題を背景として、文学史上での「詩」から「小説」、ロマン主義からリアリズムへの過渡期において、「哲学詩」が文学と社会の相関を考える上で極めて象徴的かつ重要な現象であったことを明らかにした。
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