東ドイツ文学の通史的な文学史把握を批判的に補完するクロノトポス的な考察方法を提示できた。党の文化政策に規定された東独文学にあって、1970年代以降の地下出版文学は小さな「公共性の孤島」を作り出した。そこでは社会的、政治的、経済的なヒエラルキーも国家のイデオロギー言語も完全に放棄された。西側市民社会の「公衆の原理的な開放性」(ハーバーマス)とは違い、芸術家だけからなる小さなサークルは「公共性の孤島」と呼ぶのがふさわしい。その性格を考えるに当たって、バフチンの「クロノトポス」を基本に、フーコーの「ヘテロトポス」やユートピア的なクロノトポスなどを取り込み、概念の精密化にも大きく貢献することができた。
|