研究実績の概要 |
前年度までに処理した二つのアンソロジーにCを加えて、都市インフラ関連語彙リストを拡充する作業が進んだ(C: Grossstadterfahrung. In: Lyrik des Expressionismus. Tuebingen 1999. ) 。unixコマンドを使って出現語彙を塊化し、重要語彙の拾い出しを行った。詩語のテキストファイル資料全体を拡充する作業については、二つのDVD資料(Daten Deutscher Dichtung. www. Zeno. org. / Deutscher Lyrik von Luhter bis Rilke. Ditigal Bibliothek.)からのデータの取り込みと整形を継続中である。現時点で詩のファイル総数は11.541、総語数は5,731,424であり、大きさとしては詩語に特化したコーパスとして比較作業に使えるものになったため、トラークルの詩テキストを入れた各フォルダやA、B、Cアンソロジーとコンコーダンサー(AntConc)を使って比較する作業を始めた。 鉄を使った自由な造形などの20世紀初頭のインフラ施設に注意が払われず、インフラ関連語彙が詩語になりにくい問題については上記のリストと照らしあわせながらBenn, Stadler, Boldt, Hyme, Blass, Kernerなどの詩から地下鉄、鉄路、路面電車などに言及するものを取り上げて解釈作業をし、インフラ関連語彙の使用傾向を論文化する準備を進めた。 テキストデータベースの文学研究の応用方法の検討についてはトラークルの作品群のデータを引き続き用いて、第2詩集第2連作『孤独な人の秋』の構成を他の連作詩群との使用語彙の比較で検討して口頭発表した。
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今後の研究の推進方策 |
1 表現主義アンソロジーテキストデータ(A、B、C)からBahn, Bahnhof, Eisen, Berlinなどのキーワードでファイルを集約して作成した語彙群を使って、インフラ関連語彙の詩語や共起するwie比喩イメージの語を増やしてリストを増強する作業をさらに進める。また、その語彙群と詩語のテキストデータベース全体とをコンコーダンサを使って比較して語彙群の特徴語を拾い出し、リストと比較検討する。この結果を踏まえながら、Benn, Stadler, Boldt, Hyme, Blass, Kernerなどの詩の解釈に基づく表現主義の詩におけるインフラ語彙の扱いについて論文発表する。また、検索に関わる作業そのものについても口頭発表して成果報告する。 2 本研究期間後の研究の方向を見定めるために、1の計画に支障がない限りにおいて以下の作業も並行して行う。(1)コンコーダンサを使って表現主義アンソロジーのデータをテキストデータベース全体と比較し、A、B、Cの特徴語を拾いあげる。(2)同様の方法でベルリンのアンソロジーのデータD、Eをそれぞれテキストデータベース全体と比較して、Dの特徴語、Eの特徴語からD、Eの傾向を比較検討する(D: Grossstadt Lyrik. Hg. von H. Moeller. 1903 Leipzig. / E: Pinthus, Kurt: Menschheitsdaemmerung. Hg. von K. Pinthus. 1920 Hamburg.)。 3 テキストデータベースを整える作業(ファイルの重複などへの対応)は一旦中断して現状での利用を目指す。版元と交渉して著作権処理の作業を進め、コーパスデータを公開しているさまざまなWebサイトのスタイルを検討するが、ある程度未整形での研究データとしてのデータ公開を目指す。
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