28年度は以下の資料の調査、訳注等の執筆、及び本課題に係る研究成果報告書の作成を行った。 資料の調査については、まず静嘉堂文庫において本研究の主たる研究対象である北宋・晁迥撰『法蔵砕金録』と内容上重なり合うことの多い晁迥撰『昭徳新編』三巻について調査を行った。三巻本を蔵する機関は希であり、静嘉堂文庫の三巻本には「去(+示)迷五説」を存する。ついで国立公文書館(内閣文庫)において北宋・陳舜兪『廬山記』に関わる『廬山志』十六巻の調査を行った。 訳注等の執筆については、「晁迥『法蔵砕金録』所収白居易関係資料訳注稿(一)」(『白居易研究年報』第17号、白居易研究会編、勉誠出版、2016年)を公刊した。これは『法蔵砕金録』の白居易詩文を含む箇条について訓読・口語訳及び詳細な語釈を施すもので、晁迥が白居易の詩文をどのように読み、理解し、時には自身の創作に役立てていたかを具体的に跡付けるものである。また、「陳舜兪『廬山記』所収白居易詩文」(下記報告書所収)においては、『廬山記』五巻に含まれる白居易関係の文と詩をすべてを取り出し、『廬山記』諸本及び『白氏文集』等諸本の間の文字の異同を記すとともに、主として元禄本『廬山記』の訓点に依拠した訓読を試みた。これによって、陳舜兪が『廬山記』執筆に用いた白居易詩文について一定の所見を得るとともに、白詩中の地名・人名等と『廬山記』中の記載との対応に関する基礎資料を作成した。 今年度は最終年度に当たるため、これまでの成果を集約した研究成果報告書『北宋における白居易受容の研究』を編纂して冊子とし、①「晁迥『法蔵砕金録』と白居易詩文初探」、②「白居易「以詩爲佛事」と『維摩経』―宋代への継承を視野に入れて―」、③「晁迥『法蔵砕金録』所収白居易関係資料訳注稿(一)」、④「陳舜兪『廬山記』所収白居易詩文」の四篇を収載した。
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