研究課題/領域番号 |
26370407
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
野村 鮎子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60288660)
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研究分担者 |
田口 一郎 日本大学, 文理学部, 教授 (70303097)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 列朝詩集小伝 / 銭謙益 / 明詩 / 明末清初 |
研究実績の概要 |
本研究は、明の代表的詩人50名について、銭謙益が『列朝詩集小伝』(以下、『小伝』)編纂の際に依拠した原資料を索出し、原資料と『小伝』の内容を比較検討することで『小伝』の誤謬を正そうとするものである。『小伝』が依拠した資料は、詩人の墓誌銘や行状、詩集の序文から詩話や筆記、あるいは小説や野史の類にまで及んでいるが、依拠した資料名や逸話の出処は記されていない。そのため、まずは『小伝』が依拠した原資料を調査索出し、『小伝』の内容と比較検討して、改変や潤色の有無を考察した。 27年度は前年度同様、研究グループによる「『列朝詩集小伝』講読会」を定期的に開催して解読を進めた。研究会では担当者が詩人の『小伝』の訓読や注の外に、『小伝』が依拠したと思われる原資料や、「小伝」に改変または潤色が疑われる箇所について調査した結果を研究会でレジュメ報告し、その後に出席者全員で改変の意図やその影響を検討する形をとった。27年度に開催した研究会は14回、とりあげたのは袁中道、謝在杭、程嘉燧、羅洪先、李卓吾、唐寅、劉基(甲前集と甲集一の2篇)の7篇と、加えて「列朝詩集序」1篇の解読も行った。特に上記の詩人のうち袁中道、程嘉燧、李卓吾は銭謙益の文学評価に影響を与えた人物でもあり、これらの小伝と「列朝詩集序」の解読によって、『列朝詩集』の編纂過程の一端を明らかにすることができた。 銭謙益の遺民詩に対する評価を検討した結果、彼が早くから遺民詩になみなみならぬ関心を抱いており、それが『列朝詩集』「甲集」の直前に「甲集前編」を置いて明のみならず、かつて元に仕えていた詩人の詩を載録した動機であったこと、また、銭謙益が劉基の元朝時代の伝を「甲集前編」に入明後の伝を「甲集」の卷首に置いた背景には、明朝と清朝の両朝に仕えることになった銭謙益自らの事情を反映したものであった点も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり、27年度は研究会を14回、月に1度以上の頻度で開催し、『列朝詩集小伝』について解読を進めた。27年度に取り上げた詩人の『小伝』はいずれも長篇で引用が多く、依拠資料の調査に時間を要したことから、とりあげた小伝は8篇と序文1篇と分量には多くないが、すでにこれまでに予定の50篇中29篇が完成している。 また『小伝』の原資料索出のために、大学休業期間を利用して、海外では北京の国家図書館、北京大学図書館、国内では国立公文書館内閣文庫や国会図書館関西館での調査を行っており、資料蒐集はほぼ順調である。 論文についてもこれまで本研究に関わる成果として3本の論文を公刊している。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき研究会を月1度の頻度で開催し、『列朝詩集小伝』の講読作業と、原資料に関する調査を継続する予定である。 28年度については、特に明初の詩人について解読を進める予定である。 なお、28年度秋にはこれに関するシンポジウムを奈良女子大学にて開催する予定である。 また、最終年度にあたる29年度の成果の公開出版をめざして、研究班の共同作業で原稿の整理を行い、研究成果公開促進費(学術図書)を申請する。
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