研究課題/領域番号 |
26370409
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
戸崎 哲彦 島根大学, 法文学部, 教授 (40183876)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 柳宗元 / 劉禹錫 / 翰林院典篰廳關防 / 唐柳先生文集 / 南宋永州三〇巻本 / 屋代弘賢不忍文庫 / 徳富蘇峰 / 金澤文庫 |
研究実績の概要 |
1)中国国家図書館蔵の清・天禄琳琅旧蔵宋韓醇『詁訓』刊本による四庫全書底本について、書式や書込み、字体・配置等の不一致や「翰林院典篰廳關防」「古潭州袁卧雪廬收藏」等の押印とその位置関係によって、少なくとも三種の抄本を配補した合本であり、天祿琳琅藏刊本→甲種本→?→薈要本(乾隆四三年)、乙種本→丙種本→文淵閣本(四六年)、文溯閣本(四七年)、文津閣本(四九年)という関係が想定される。 2)『詁訓』は四庫底本のみ巻1末に韓愈「柳子厚墓誌銘」「祭柳子厚文」を加えており、宋刊本の原形を留める。『詁訓』は沈晦四五巻本を底本とするから、唐・劉禹錫原編三〇巻本の系統を装った行為であるが、今日亡佚の韓醇詁訓『韓愈集』に拠ったものであり、文献的価値は高く、その異文に因って『韓愈集』に二系統の存在が知られる。 3)南宋『永州』三〇巻刊本について、その残巻が昨年3月に東京・山本書店よりブックフェア―に出品され、閲覧する機会を得て、それを加えた研究を開始した。本残巻は金澤文庫旧蔵のもので静嘉堂文庫現蔵本の僚巻であり、極めて貴重である。売価は2億円。日本における伝来には、静嘉堂文庫現蔵本(明治四〇年)<松方正義(徳富蘇峰の斡旋、明治三六年)<竹添進一郎(明治二〇年)、また山本書店<?(明治初)<浅野長祚梅堂<新見正路賜蘆文庫<屋代弘賢不忍文庫(天保五年以前)<金澤稱名寺の二経路が存在した。 4)永州本に附す汪檝「跋」(嘉定元年1208))、乾道元年(1165)本刊記を復元し、嘉定補刊本の特徴とその功罪を説き、残巻の編次復元と四五巻本との関係から、45巻本の祖本は錯簡していた三〇巻本系統を基にして他人の作を含む新輯補遺を加えて新たに作品を内容に拠って分類編次しなおしたものであり、劉禹錫三〇巻本は文体分類による分巻と各文体巻内は制作年代による編次がなされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は想定外の成果も得て、すでに国際学会で発表しており、また今年度も国際学会の参加発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年、山本書店より出品された、劉禹錫原編三〇巻本の直系である南宋永州刊本の日本現存残巻本が閲覧できたのは望外の収穫であり、永州本を手掛かりとして三〇巻本の成立に関する問題、劉禹錫の採った編次の方法とその意図および柳宗元本人の取捨選択の有無と意図等について展開するとともに、一昨年から進めている音辯本については元刊本との関係を明確にすることから南宋における成立過程に転じ、まず輯註者劉怡堂と「後序」の作者劉欽、両者の関係、その人と地との究明を通して刊刻の背景・理由・意味等について進めていく。また今回、南宋永州本の他に『詁訓』では四庫底本のみに劉禹錫が『柳集』に附した韓愈「柳子厚墓誌銘」が収められていることが知られた。これは柳宗元研究にとって最も重要な作品であり、しかも『韓集』よりも成立が早いが、『柳集』所収の方は殆ど知られておらず、したがってそれを用いた校勘もない。すでに諸本との校勘から二系統の存在を確認しており、これが今日まで分かれている褒貶二説に関係するという新たな視点と評価を提示したい。 また、今秋に開催が予定されている古代散文国際学術研討会・唐代文学国際学術研討会での参加発表にエントリーし、それに向けて論文を準備していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた書籍(古書)の価格が変動して今年度予算では不足が生じたために見送ったことによって多少の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
図書館所蔵本(現時点で掌握している所では中国国家図書館)に拠って閲覧して筆記し、必要個所をコピー(制限あり)するという方法で対応を考えており、研究の遂行に当たって大きな支障は生じない。
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