研究課題/領域番号 |
26370413
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
工藤 貴正 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (80205096)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大正生命主義 / 大正デモクラシー / 第三期創造社 / 戦後台湾 / 『新青年』 / 『自由中国』 / 張我軍 / 雷震 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、研究課題「台湾変革期に中国から受容された2度の大正文学の影響に関する研究」の中、昨年度までの研究達成で予想できた、「中国の『新青年』に展開された「文学革命」とその延長にある「中国新文学」には、大正生命主義の影響が顕著であること」を証明するために、平成28(2016)年8月30日に、上海の復旦大学中文系で「《新青年》与大正生命主義思想―魯迅《狂人日記》和周作人《人的文学》的成立以及其思想性意義」と題する講演を行い、その後修正を加えて大学紀要で論文「『新青年』と大正生命主義思想―魯迅「狂人日記」、周作人「人的文学」の成立とその思想的意義」(『愛知県立大学外国語学部紀要』(言語・文学編)第49号、159-179頁、平成29.3)として発表した。 また、9月の海外調査では、上海図書館において、大陸時代の雷震の発表論文を各種雑誌から、および第三期創造社のメンバーで京都大学留学生の李初梨(1900-1994)、馮乃超(1901-1983)、彭康(1901-1968)に関わるマルクス主義文芸理論の資料を雑誌、単著から収集できた。3月の海外調査では、台北・中央研究院人文社会科学聯合図書館で、「雷震と大正デモクラシー」を作成のために必要な薛化元著『戦後台湾人権発展史1945-2000』、任郁徳著『雷震と台湾民主憲政の発展』などの文献の資料収集を行えた。 さらに、昨年、台湾中央研究院の人文社会科学聯合図書館と台中・静宜大学蓋夏図書館で複写により入手した『雷震全集』全47巻の中、雷震回憶録『我的学生時代(1)』「明寮一年」「八高三年」の翻訳を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は上海の復旦大学中文系で「『新青年』と大正生命主義思想」の講演に関わる調査を通して、『新青年』に関わった日本留学経験をもつ陳独秀(1879-1942)、李大釗(1988-1927)、李漢俊(1890-1927)らの中国共産党党員は日本で大正デモクラシーや人道的社会主義に接触しているが判明したことにより、雷震のケースも含め、現在のキーワードとしている「大正文学」という言葉を、「大正主義」という概念に拡大、変更して研究を行うことが適切であると判明した。そこで、「大正主義」とは、日露戦争後に始まり満州国成立期には完全に崩壊した「大正教養主義」を基礎とした「大正生命主義」と「大正民主主義(デモクラシー)」および「人道的社会主義」を包括させた概念として使用することにした。その結果、1945-60年戦後台湾における中国経由での大正主義の再受容のケースを証明するには、『自由中国』(1949-60)の主編・雷震(1897-1979) を育てた日本における大正主義受容の詳細と実態を実証し、戦後台湾におけて開花した雷震の「大正デモクラシー」思想の内実を解明することにある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、雷震の回想録『我的学生時代』(全255頁の「京都帝大三年半―1923-26」を含む)の翻訳を完成し出版の準備を進める。さらに、雷震の京都帝大在学中の時期の授業の受講科目や読書体験、その他様々な事跡を調査する。また、中国での文芸思想の変革期に位置した第三期創造社のメンバーで河上肇の弟子であったとされる李初梨、馮乃超、彭康の京都帝国大学文学部哲学科に留学中の事跡を調査し、同時に彼らの文芸論を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残高は580円であるので、ほぼ使い切ったと言える。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費の購入などで調整する。
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