漢魏晋南北朝隋唐時代における『山海経』の受容について、とくに文学と社会との関わりを中心に検討した。その結果、例えば、漢唐間に誕生し、唐の行政法典『大唐六典』には最高品第の祥瑞として記録された「吉利・富貴」という名称の祥瑞の成立と受容めぐり、日本・朝鮮半島・中国周辺にのみ残る祥瑞情報を繋ぎ合わせ、以下の点を明らかにした。①、吉利・富貴が本来、一対の獣頭獣足の鳳凰であること、②異形の博物誌『山海経』の鳳凰を継承すること、③凶兆としての鳳凰(發明、焦明、粛+鳥霜+鳥、幽昌)を前提に、新たに誕生した民間的な瑞鳳であること、等である。
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