研究課題/領域番号 |
26370417
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
稲畑 耕一郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30063803)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 傅増湘 / 藏園 / 傅増湘詩集 / 傅増湘の伝記 / 傅増湘の書 / 傅増湘の古玉研究 |
研究実績の概要 |
本年度は傅増湘の自書詩と古玉研究についての論文を発表した。 前者は、晩年に自書された『藏園老人遺墨』(印刷工業出版社、1995年)の作品について、その具体的な書写時期を傅増湘が主宰した『雅言』などの資料をもとに明らかにし、その書作の価値について論じた(「傅増湘の『蔵園老人遺墨』について」、『中国文学研究』第42期、早稲田大学中国文学会、2016年12月)。 後者は、『尊古齋古玉図録』に収められている傅増湘の序文から傅増湘の古玉に関する造詣の深さと尊古齋という北京琉璃廠の古物商の仕事について論じた(「傅増湘の古玉研究――『尊古齋古玉図録序』考」、『早稲田大学文学研究科紀要』第62輯、2017年3月)。この論文は清華大学図書館に所蔵される原拓本の図録を詳細に実地調査した成果であり、これまでの同図録の市販のリプリント版の問題点なども併せて指摘できた。また尊古齋の一連の古物図録についての悉皆調査もこれまで看過されてきたものであり、中国出土器物研究における同図録の価値に注目すべきことを指摘した。 この他、傅増湘の詩作の収集作業を継続し、あらたに20首あまりを発見し、これまで作業を進めてきていた『傅増湘詩集』を補うことができた。その詳細な報告は2017年度に発表することになる。傅増湘の伝記に関わる資料も大量に収集することができたので、これも最終年度に執筆予定の論文に取り込む。 また昨年度の成果に基づいて、復旦大学で行われた国際シンポジウム「東亜視閾中的中国古典文献学与文学」で、傅増湘の最も若い頃の農学進行に関わる論文について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来は昨年度でもって研究を終結させる予定であったが、最終成果報告書をまとめる段階の昨秋11月に他の委託研究での国際シンポジウムを主催する仕事が重なり、拙速を避けるため、最終成果報告書の取りまとめを一年先送りとせざるを得なかった。それでも、本年度は、関係の論文2本を学会誌の発表し、国際学会でも論文を提出した。これまでの研究期間中に発表したものはすでに10余篇となるが、傅増湘の全詩作を集めて『傅増湘詩集』の初稿を出すという当初の計画はまだ果たしていない。材料はほぼ収集できいているので、今秋までには校訂作業を終えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
傅増湘は民国の大古典学者であるにもかかわらず、詩集・文集の編纂はなされておらず、また本格的な伝記研究もないに等しい状況が続いてきた。従って、なお未着手の研究テーマが驚くほど多く、わずか数年では完結することはできない豊富なコンテンツを持つ課題であることがわかってきた。しかし、本研究の最終年にあたり、中心的なテーマとして掲げてきた「基礎的研究」にあたる、生涯に作られた詩篇を『傅増湘詩集』として編纂し、そこにこれまでのこの数年間に発表した研究論文の一部を収め、学界に提供する成果報告とする。これによって傅増湘研究はこれまでと異なる段階に入ることになると確信する。その刊行は年度内を予定しているので、秋にはおおよその刊行作業を終えることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来、昨年度中に完結させる予定で当初は順調に調査研究を進めてきていたが、昨秋11月に他の委託研究の案件で国際シンポジウムを主催しなければならなくなり、その準備作業に時間を割かれたため、最終段階での成果報告の『傅増湘詩集』の原稿整理の段階でより万全を期すべくに1年の先送りを願い出て、承認された。主にこの『傅増湘詩集』編纂作業と出版に関わる経費が未執行となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の主要な作業は『傅増湘詩集』の校訂作業と原稿整理であり、これらを夏季休暇中に仕上げて、秋には原稿を入稿する予定である。そこにはこれまで発表してきた中国語論文をつけて仮製本の私家版として出版するので、これに関わる経費を見込んでいる。 また補足的な研究課題についても新たな論文を執筆し、これを国際学会(11月)で発表するので、これに関わる費用も予定した。
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