研究課題/領域番号 |
26370420
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
下村 作次郎 天理大学, 国際学部, 教授 (20148670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 台湾原住民族 / 口承文芸 / 書写文学 / 台湾原住民文学史 / エスニックマイノリティ文学 / 世界少数民族文学 / 海洋文学 |
研究実績の概要 |
本「研究の目的」は、これまでの研究蓄積を踏まえ、台湾原住民文学の全体像を明らかにし、台湾原住民文学史の構築を目的とするものである。平成26年度の「研究実施計画」は、台湾文学史における台湾原住民文学の位置を考究し、その全体像を描くこと、さらには、タオ族の海洋文学作家、シャマン・ラポガンの作品の翻訳を完成することであった。 「研究実施計画」は、以下のように着実に実施し、連携研究者および海外の研究協力者の協力のもとに、下記の研究成果をあげることができた。 台湾文学については、2014年5月に中島利郎氏、河原功氏との共編により、『台湾近現代文学史』(研文出版、全527頁)を出版した。該書には、連携研究者、魚住悦子氏による「台湾原住民族文学の誕生―ペンをとった台湾原住民族」(全36頁)を収録した。さらに、2014年8月、本研究代表者の下村は、台北滞在中にシャマン・ラポガン氏に何度も会い、翻訳中の作品の不明箇所、風俗習慣、タオ語についてご教示いただいた。その研究成果は、2014年12月、魚住悦子訳『冷海深情 シャマン・ラポガンの海洋文学1』(草風館)、下村作次郎訳『空の目 シャマン・ラポガンの海洋文学2』(同)として刊行した。 以上の三冊の研究成果は、いずれも書評で大きく取り上げられた。学界での評価を知ることができよう。 研究交流の上では、2014年11月には『台湾原住民文学史綱』(上・下、里仁書局、2009年)の著者、浦忠成氏(ツォウ族、パスヤ・ポイツォヌ)が天理大学附属天理参考館を訪れた際に、台湾原住民文学に関する意見交換を行った。なお、研究代表者は、平成26年度、本研究に直接・間接に関わるテーマで三度、講演を行った。(〔学会発表〕参照)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度内に予定した『台湾近現代文学史』およびシャマン・ラポガンの海洋文学2巻『冷海深情』と『空の目』を予定通り刊行することができた。この間、『台湾原住民文学史綱』の著者、浦忠成氏やシャマン・ラポガン氏に会い、二人の原住民族作家をインフォーマントとしてインタビューすることができたことは大きい。さらに、連携研究者魚住悦子氏の「台湾原住民族文学の誕生―ペンをとった台湾原住民族」が論文となり、台湾原住民文学史構築への構想を描くことができるようになった。以上の通り、平成26年度は、きわめて順調に進展したということができる。
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今後の研究の推進方策 |
代表者は、陳芳明著『台湾新文学史』(聯経出版、2011年)を共訳中であり、台湾文学史家、例えば葉石濤や彭瑞金、陳芳明らのあいだでは、台湾原住民文学をどのように見てきたのかを明らかにする。さらに連携研究者と協力して、日本統治時代に蒐集された原住民族の神話・伝説・口承文芸等を整理し、文献リストを作成して、台湾原住民文学の一つの源泉について考察する。また、引きつづき、台湾原住民族作家、例えば、シャマン・ラポガンやパタイの長編小説の下訳を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、夏期に約1か月の台湾での海外中国語実習の担当があり、滞在中の時間を利用して、インフォーマントへのインタビューなどは効果的に実施することができた。しかしながら、予定した秋に入ってからのフィールド調査は、十分に実施する時間が取れなかった。旅費の使用額が減少したのはそのためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、予定通りインフォーマントへのインタビューなどの他、台湾でのフィールド調査を精力的に実施し、よりいっそうの研究成果の蓄積につなげる予定である。
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