研究課題
本研究では、21世紀を迎え、ヨーロッパ=キリスト教世界とイスラーム世界との対立や、移民・難民などの人の移動のかつてない規模での拡大、グローバリズムとローカリズムの止揚の模索などといった今日的な問題意識のもとに、東西文明の融合の地である北アフリカの現代文学の状況とその意義について、チュニジアとアルジェリアを対象地域として検討し、この地域の文学運動やその蓄積から学ぶべきものを抽出した。最終年度である2019年度は、これまでの年度での現地への渡航調査の上に立ち、文献資料にもとづく研究を中心として総括的視野を得るとともに、これまでの活動成果の発信に努めた。研究成果として、著書(翻訳書)1点、学術論文4点(うち3点は国際会議論文、1点は英語論文)、学術発表7件(うち5件は招待発表、6件は国際会議発表、1件は英語発表)、ほか海外での講演1件があり、北アフリカ現代文学の今日的意義を国内外に十分に発信することができた。とりわけ今年度は、アルジェリアの植民地時代とその文学を新たな観点からまなざすフランス人マンガ家J・フェランデズのさまざまな著作・作品を通じて、アルジェリアの社会・文学・文化を再検討することが、異文化接触のなかで生まれる人間の状況とその問題(異なる記憶の社会的な承認と共有、異なる他者間の「融合」と「並存」のバランス、など)について今日われわれが問いなおすための、きわめて有効な機会となることを明らかにした。研究期間全体を通じては、当初の目的通り、チュニジアおよびアルジェリアの両国をそれぞれの社会事情を踏まえながら同時に視野に収めることで、この地域から生まれる文学の動向とその意義を抽出した。また、現地の研究者・知識人との交流を持続的に進展させ、日本との直接的な研究交流を新たに築くことができた。さらに北アフリカの文学・文化についての研究を世界的な人文学研究へと接続する道を拓くことができた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 図書 (1件)
文学研究論集(筑波大学比較理論文学会)
巻: 37 ページ: 1-20
国際シンポジウム「ポップ・テクストの力――日本文化の対話的発展に向けて」報告書
巻: - ページ: 23-28
2018年度大学重点研究所支援事業第1回国際学術会議「帝国と植民地の身体イメージ」報告書
巻: - ページ: 39-44
Proceedings of The II. International Conference of the Asian Federation of Mediterranean Studies Institutes
巻: - ページ: 145-151