研究課題/領域番号 |
26370428
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 さゆり 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (40447503)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビルマ / ミャンマー / 古典歌謡 / 伝承 / 写本 / 貝葉 / 口頭伝承 / 楽譜 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ビルマ国文学の核であり、伝統芸能の基盤である「タチンジー(大歌謡)」と総称される古典歌謡の伝承と創作の関係を明らかにすることである。本研究では特に、報告者がこれまで撮影してきた古典歌謡の手書き楽譜約3000枚の画像分析から、伝承のかたち、同一曲のヴァリエーション、楽譜作成を手がけたミャンマーを代表する竪琴奏者であった故ウー・ミィンマウンの音楽伝承における功績に焦点をあて分析を行う。 28年度の作業として実施したのは、これまで収集した古典歌謡の手書き楽譜の整理とデータベース化、分析である。前年度までに撮影を終えた分の故ウー・ミィンマウンの手書き楽譜をジャンルごとに分類し、同一曲のバリエーションを整理した。この楽譜の分析の結果を2017年7月のIntetnational Council for Traditional Musicでの口頭発表に申し込み、受理された。 6月には東南アジア学会第95回研究大会において「ビルマの近現代歌謡―メディアを通して生まれる歌謡―」のタイトルで口頭発表を行った。この研究は、古典歌謡の伝承が口頭から録音メディアを使用するようになった過程に関係するものである。 9月にミャンマー現地調査を実施し、古典歌謡がレコードに録音されるようになった20世紀以降についての調査を並行して進め、レコード関係の文献の収集を行った。2015年に出版されたものの希少本である千ページを超す大著『ミャンマーのレコード史研究』(Maung Maung著)を著者の知人を通じて入手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は現地調査、東南アジア学会研究大会での口頭発表を実施し、楽譜画像約3000枚の整理を進めた。手書き楽譜、歌詞を掲載した貝葉写本等の一次資料の分析などの作業もおおむね順調に進めることができた。一方、論文執筆が中途であることから②の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は楽譜画像の分析結果をまとめ、その成果を7月13-19日にアイルランドで開催される国際学会(International Council for Traditional Music)での口頭発表を行い、論文にまとめる。また、口頭伝承に影響を与えた録音メディアの歴史について執筆中の「レコード産業とビルマのポピュラー音楽」(仮題、国立民族学博物館共同研究)を共著原稿として出版予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度のミャンマー現地調査の期間が当初予定より短縮されたことと、口頭発表を申し込んでいたSociety for Ethnomusicologyでの口頭発表が実現しなかったことから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
アイルランドでの国際学会での口頭発表参加、及びミャンマー現地調査費にあてる予定である。
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