研究課題/領域番号 |
26370431
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
中垣 恒太郎 大東文化大学, 経済学部, 教授 (80350396)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 災害表象 / ドキュメンタリー / 都市 / 環境 / テクノロジー / メディア / 倫理 / 共生 |
研究実績の概要 |
研究発表「災害表象とドキュメンタリー表現の変遷――都市・環境・テクノロジーの政治学と倫理」2015年5月31日(日本映像学会第41回全国大会、京都造形芸術大学)として、主にドキュメンタリー/記録映画を素材に、災害表象の変遷を辿ることにより、映像表現がいかに発展してきたのかを探る考察を行った。ドキュメンタリーに対する概念が問い直され、作り手の「主観」や被写体や作品に対する「倫理」の問題に対する意識について議論が高まる中で、新たな「災害」を「表象」するドキュメンタリー作品が今現在どのように生成されつつあり、過去の作品がどのように再評価されつつあるのかを吟味することにより、「映画」という表現「メディア」、ドキュメンタリーという表現「ジャンル」の概念それ自体までをも再検討することができるのではないか。ドキュメンタリー表現の作り手による「主観」の問題、対象に対する表現者の「倫理」の問題、災害により顕在化する「都市・環境・テクノロジー」の問題にも目を向ける。これまでの研究の実績を踏まえた上で、「災害表象」に特化し、対象をより限定することにより、研究を掘り下げることを目指した。 ドキュメンタリーに対する概念が問い直され、作り手の「主観」や被写体や作品に対する「倫理」の問題に対する意識について議論が高まる中で、新たな「災害」を「表象」するドキュメンタリー作品が今現在どのように生成されつつあり、過去の作品がどのように再評価されつつあるのかを吟味することにより、「映画」という表現「メディア」、ドキュメンタリーという表現「ジャンル」の概念自体までをも捉え直すことができるのではないか。さらに、「災害表象」をめぐる作品の特徴として、時代や国、文化が異なる世界を「繋ぐ」役割も見過ごすことができない。「共に考える」機会を提供することができる「災害表象」をめぐる作品の社会的役割についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国海外調査により、たとえば1915年のサンフランシスコ万国博覧会がちょうど百年後となる2015年に様々な形で再検討する研究企画に触れることを通して、1906年のサンフランシスコ大震災を「記録」し、復興させていく象徴として万博が機能していることを確認することができた。また、映画監督・堤幸彦は毎年、東日本大震災の被災地・気仙沼を訪れ、「ドキュメンタリー・ドラマ」の手法で一年毎に被災地に暮らす人々の様子を描くプロジェクト『Kesennuma, Voices. 東日本大震災復興特別企画~堤幸彦の記録(1~4)』(2012-15)を展開しており、2011年の東日本大震災をめぐる災害表象の記録は現在まさに進行している最中であり、現在進行形の動向にも目を配りながら、災害表象の可能性と課題とを探っている段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
『エコクリティシズムで読み解く日米大衆文化――ポスト工業化社会における核・ジャンク・廃墟の想像力』を含めた本研究課題の成果を出版企画立案に繋げ、研究期間以内に刊行できるように準備していく。 これまで日本の災害表象文化分析を中心に研究活動を展開してきたが、本国際共同研究課題では米国ニューヨーク拠点にした国際共同研究として、「ニューヨークで起こったハリケーン・サンディ(2012)」、「ニュー・オーリンズで起こったハリケーン・カトリーナ(2005)」を中心に歴史的な自然災害(たとえば1900年のハリケーン・ガスベストン、1927年のミシシッピの大洪水、1906年のサンフランシスコ大地震、1931年から1939年にかけてグレートプレーンズ広域で断続的に発生した砂嵐/ダスト・ボウル)や、1989年のエクソンバルディーズ号原油流出事故、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故など、米国の災害文化史を包括的かつ事象毎にまとめ、現地での実地訪問を行うことにより、土地勘を養いつつ歴史的変遷を掌握する。災害表象にまつわる文化作品の基礎資料作成を進めながら分析を行い、これまでに行ってきた日本を事例とした災害表象分析研究の成果をも含め、随時、各種学会で成果報告を行う。
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