四年目となる今年度は、研究計画に於いて提示した、データベースの補完と報告書の執筆を中心とする作業を行った。(1)データベースの補完作業としては、データベースに、韓国・インドの鬼説話・冥界説話の情報を入力するとともに、中国大陸や台湾における鬼に関連する祭祀や口頭伝承に関する情報も追加し、より充実したものとした。(2)報告書の構成は、現在の構想では以下のようなものにする予定である。「第一章 鬼文化及び冥界観念についての概論」「第二章 六朝までの中国における鬼文化・冥界観の変遷」「第三章 唐宋の中国における鬼文化・冥界観の変化と、中世日本における展開」「第四章 鬼文化から展開する動物説話・定数説話の世界」「第五章 鬼説話・冥界説話の話型・モチーフインデックス」 期間全体を通しての、本研究の具体的内容は、『太平広記』や『冥報記』などの志怪小説集に収録される六朝から唐までの志怪や、宋代の『夷堅志』、明の『剪灯新話』、清の『聊斎志異』『閲微草堂筆記』『子不語』などの膨大な数の中国鬼話に対し、話型、モチーフ、史的背景など、様々な角度から分析を行い、さらに定数説話・供養説話・動物説話などに分析対象を広げ、それらの説話が実は鬼文化の影響下に成立しており、鬼話と話型等の面でも密接に関わることを発見するに至り、鬼話を中心に各ジャンルの説話が有機的に関連していることを明らかにした。また、中国説話が日本説話に翻案されるメカニズムとして、中国とは異なる日本独自の鬼文化が影響していることも明らかになった。これらの発見は、日中の説話文学史を融合する上で核心となる内容であり、国境を越えた説話文学史を創出する上で、本研究は、重要な意味を持つものとなった。 研究成果は、これまでも多数の論文や学会報告において発表してきたが、今後も平成28年度仏教文学会シンポジウム等でその一部を発表することが既に決定している。
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