「W文学」としての村上春樹の小説群を、「W文学」理論、テキスト分析、受容の三つの観点から研究した。2000年頃より起こった「W文学」理論は、この20年近くの間で確立されたと考えられ、これらを体系的に繙くことができた。テキスト分析については、村上の作品を村上と同時代のポストモダン文学と、戦後のモダニズム文学のテクストを比較することにより、村上の小説の「W文学」的特性を明示することができたのではないかと思う。受容については村上作品の一般読者、翻訳者、研究者、編集者からの聞き取り調査により、「日本文学」としてではなく、ナショナル文学を越え、グローバル文学として読まれていることが確認できた。
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