今年度は(昨年度に引き続き)ロシア語及びヒンディ語の不定詞構文に注目した。 ロシア語では,伝統的に具格が最も無標的な斜格とされている(Jakobson 1936)。これに対して,海外学会での発表では,具格は意味的には与格より無標的であるが,形態的には与格より有標的であることを示した。昨年度はロシア語の不定詞構文の意味上の主語が与格標示を受ける理由を,①ロシア語で主格標識を付与する制約の適用が時制を持つ節に限定されること,②主格に次いで無標的な格標識が与格であることに求めたが,その結論の妥当性を示した。また,ヒンディ語では、不定詞構文に生じる他動詞の主語のみが主格標示を受け,自動詞の主語及び他動詞の目的語は属格標示を受けるが,格標識の有標性階層はロシア語と同様であることを確認した。
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