本研究は不定詞補部の格フレーム,特に不定詞補部の主語の格標示の通言語的変異を,役割指示文法(Van Valin 2005)の文の層状構造と層状構造を踏まえた複文構造の類型論,格付与制約群,格標識の有標性階層及び格付与領域を前提として解明した。具体的には,まず,ロシア語とアイスランド語のコントロール構文の不定詞補部の主語の格標示(与格⇔主格)を両言語の格付与領域(ロシア語=節,アイスランド語=中核)と格標識の有標性階層から導いた。次に,日本語の願望構文の不定詞補部の主語の格交替(主格⇔与格)を,願望構文が伴う複文構造の相違(中核従位接続⇔中核等位接続)と日本語の格付与領域(中核)から導いた。
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