研究実績の概要 |
本研究は、構文理論および用法基盤モデルに基づき、言語使用・言語習得のコーパスデータを用いた分析を通して、日本語の条件構文とその周辺に関して、その多義性・多機能性、談話における使用実態、言語発達における習得、さらに語用標識化・談話標識化の諸相を複合的に分析し、理論的かつ実証的に探求することを目的としている。 2018年度には, 条件構文に関する章 Chapter 24 Conditionals を執筆したthe Cambridge Handbook of Japanese Linguistics (Cambridge University Press, Y. Hasegawa (ed.)) が刊行された。条件構文に関するこの総説において、条件構文とその周辺の研究に関して俯瞰し統合した。さらに、言語学および日本語学研究一般において本課題研究の位置づけや関連づけをし、国際的議論の場に、本研究を提示し評価・フィードバックを得ることができた。 平行して、話し言葉・書き言葉コーパスや会話データ(Fujii 1995-96, Fujii 2005-06, 2015-16)を用いた分析において、文脈やレジスター・ジャンルにも配慮した共時的変容の分析や、談話・相互行為におる条件構文の語用・談話機能の分析を進めた。後者観点での研究成果の一部を 、翌年度開催される国際語用論学会に投稿し採択された。 さらに、子供の第一言語獲得における条件構文の習得に関する理論的・実証的研究を進め、第10回国際構文理論学会(2018年, パリ)において研究発表を行った。複文に加え、条件構文を基盤とするモダリティ構文や前件節のみが文法化している構文の習得を分析し、用法依拠・構文依拠の習得過程を新たな仮説に基づき明らかにした。また、国際的議論の場に本課題の言語獲得研究も提示し評価・フィードバックを得ることができた。
|