研究課題/領域番号 |
26370443
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
益子 幸江 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (00212209)
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研究分担者 |
佐藤 大和 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (50401550)
峰岸 真琴 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20183965)
降幡 正志 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (40323729)
岡野 賢二 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60376829)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イントネーション / ピッチカーブ / 声調 / 声調言語 / 非声調言語 / アクセント / 語の構造 / 文の構造 |
研究実績の概要 |
タイプの異なる言語の間で、イントネーションの型を比較対照する研究である。本研究ではピッチの言語的利用の仕方の異なる言語を対象としている。声調言語(タイ語、ビルマ語)、ピッチアクセント言語(日本語)、それらの無い言語(インドネシア語)の3グループである。 タイ語については、単音節語3語の組み合わせによる3音節連続について主として第1語と第3語が共通の声調を持つ枠を形成する場合の音声分析を行った。その結果,5つの声調は均等な5つの対立としてではなく、2段階の弁別階層をもつとして分析すべきであることがわかった。第1段階はピッチカーブの形状により、A類:比較的平坦(中平、低平)、B類:上昇下降(下降)、C類:下降上昇(高平、上昇)の3種に分類する。第2段階はA類、C類の中の弁別に最低周波数値に到達する(しようとする)ものと到達しないもの、という弁別的二項対立と捉えることが可能になる。以上の分析と型の動的な解釈について学会発表を行った。 日本語については、アクセントに関して、男女各1名が発声した孤立発声、文中発声、強調発声の各場合について、そのピッチ曲線とその特徴を分析した。また、音声のピッチ曲線を自由に変更して再合成できるソフトウェアSpitEditorの機能拡充を図るとともに、再合成音声の品質向上を図った。このSpitEditorを使用して、発話音声のピッチ曲線を段階的に変形し、アクセント感覚に及ぼす影響の検討を進めた。 インドネシア語については、インドネシアの一地方語であり、インドネシア語と同系の言語であるスンダ語につき、トピックマーカー teh および mah を含む発話の音響分析を実施し、それらイントネーションの特徴に関する分析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文イントネーションの型の言語間対照研究を行うために、異なるタイプの言語で可能な対照の方法を検討した。 声調言語では、昨年度、声調のタイプの組合せと語の文法的役割を考慮した語配列を選ぶことが重要であることが分かったが、今年度はさらに、語の内部構造によってその声調の表れが大きく左右されることが分かった。語の内部構造についてさらに検討をする必要がある。 非声調言語の日本語とインドネシア語については、文のトピックすなわち、テーマとレーマとの関係でイントネーションが大きく異なることがわかってきたので、ピッチアクセント言語の日本語と、非ピッチアクセントのインドネシア語で、この点に絞って検討を開始している。以上のように、タイプ別の結果を対照して検討する時に、どのような点をどのように考慮するかの具体的なポイントを絞りつつあるので、達成度としてはおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
イントネーション研究は、ピッチの利用の仕方が異なる場合には、研究の仕方そのものを変えなければならないことが分かっていたが、同時に、語という単位の区切りも非常に重要であることが確認された。 タイ語については、単音節語3語の組み合わせについての音声分析と3音節語の音声との比較を行う。最終年度なので,さらに最大8音節までの多音節語の分析を可能な限り行う。 日本語については、語の孤立発声、文中発声、強調発声におけるアクセント指令の差異とピッチ曲線の関係を検討するとともに、音声再合成ソフトSpitEditorを利用して、強調発話のイントネーションとアクセントのピッチ曲線の関係を、音響的および知覚的観点から研究を進める。 インドネシア語については、インドネシア語と同系の言語であるスンダ語の teh および mah を含む発話に関し、それらのイントネーションの特徴についてさらなる分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入に当り、パソコンや消耗品などについて、同じ性能・規格で安く納入する業者を選ぶなどの努力を行い、節約に努めたために残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
必要な消耗品を購入するために翌年度使用する。
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