本研究は日本語における破裂音の「有声/無声」の対立を、多言語学習者の発話及び知覚を利用して明らかにすること、通言語的視点を取り入れ、日本語においても方言差を視野に入れながら、有声性を捉え直すことを目的にしている。 平成28年度については、研究代表者は、引き続き北京語、広東語、中国朝鮮語、タイ語、ベトナム語(ダナン方言)、インドネシア語、スンダ語を母語とする日本語学習者の音声の観察を行った。研究分担者(角道)は、通言語的観点から多様な音韻現象を観察するため、アイヌ語、モンゴル語ハルハ方言などを対象に分析を行った。研究分担者(村田)は、引き続き日本語の方言について、近畿周辺部、即ち京阪式アクセントと異体系アクセントが接触する地域の方言についての調査を行った。研究代表者ならびに研究分担者は、それぞれの研究成果を論文、研究発表などを通して公開した。 本研究で対象とした話者は、いずれも母語、(レベルの差はあるが)日本語、英語などの多言語の学習歴を持つ。第二言語の習得が母語の音声に影響を与えることは、既に知られているが、有声性について多様な母語(有声/無声の二項対立、有気/無気の二項対立、有声音、無声音に加え、有気音を持つ言語)の話者たちがどのような知覚、発話を行うかを観察してきた。また、日本語の方言においても、(特にアクセントとの関係において)有声性がどのような影響を与えるかを検討してきた。平成28年度は、本課題研究の最終年度として、研究代表者、研究分担者二名によって、これまでの研究成果報告と残された課題についての検討を行った。
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