研究課題/領域番号 |
26370452
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高井 岩生 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (30437751)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動作語獲得 / 項構造 / 項名詞 / 語彙的意味 |
研究実績の概要 |
理論的な研究の面では,項構造は一定不変な内容を持っているのではなく,統語的な手続きによりその内容が改変されることがあるということを示した.この研究成果は,J.-R. Hayashishita(オタゴ大学)市との共同執筆中の"Passives in Japanese"において詳しく論じている.この論文は今年度中にJournal of East Asian Linguisticsに投稿予定である.また,動作語の語彙的意味は,その動作語と共起する項名詞の意味特性から同定可能であるという可能性を示唆した研究を,申請者の単独発表として台湾の台湾日本語文学国際学術研討會(2017年)へ投稿中である. 動作語の語彙的意味は,その動作語と共起する項名詞の意味特性から推測でき,項名詞の個数は項構造で指定されているとすれば,動作語の語彙的意味と項構造には密接な関係があるということになる.ある動作語にとって適切な項名詞を,その動作語と共起させれば,その動作語の語彙的意味の理解に役立つ可能性がある.そこで,療育の現場での動作語獲得を支援する目的で,動作語と共起する項名詞の語彙的意味に注目させ,動作語の語彙的意味を理解させる手法の開発に着手した.現在は,検査に使う動作語のリストを作成中である.このリストに載せる動作語の特徴は,項名詞の語彙的意味を基盤にして記述している.リストが完成すれば,言語聴覚士のチームと共同で動作語の差異に注目させることが項構造の獲得に有効であるかどうかの調査を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査の基盤となる分析案の構築はほぼ予定通りに進んだ.対象児に対する検査手法も,今村亜子氏を中心とした言語聴覚士のチームが対象児にできるだけストレスフリーな手法を考案し,聴覚障がい児数人に対してパイロットスタディを行っている.動作語の記述及び,それに基づいたリスト作成の最終段階にはいったところで,私的事情により、十分な研究時間を確保が難しかった為、前年度は、当初計画通りに研究を進めることができなかった。しかし、今年度は当初も予定通りに研究を進めることができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
6月までに動作語のリストを完成させる.リスト作成には日本語教師を雇用する予定である. 7月より,福岡県太宰府市にある社会福祉法人宰府福祉会幼児通園施設すみれ園において,調査を開始する. 8月の段階で一旦調査結果をまとめる.これを日本言語学会へ投稿する. 9月から12月の間で複数回調査を行い,調査結果を分析し,動作語の差異に注目させることがその動作語の項構造獲得に有効であるのかどうかを検証する.有効であるということが分かれば,項構造獲得の理論を構築していき,その結果を論文などで発表する.有効ではないということが明らかになっても,それは理論的な予測が間違っていたということであるので,臨床の現場に役立つように,調査時に使用した動作語のリストと検査手法をまとめて,公表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
私的な事情により、研究時間の確保が難しく、当初計画通りに研究を進めることができなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
6月までに動作語のリストを完成させる.リスト作成には日本語教師を雇用する予定である. 7月より,福岡県太宰府市にある社会福祉法人宰府福祉会幼児通園施設すみれ園において,調査を開始する.このときに,検査キットを購入する.言語聴覚士の今村亜子氏を雇用する. 9月から12月の間で複数回調査を行う際には,今村亜子だけではなく他に2名雇用する予定である.12月には,台湾の学会への旅費として使用予定である.1月からは,動作語のリストを製本する予定であるので,製本代とその作業従事者の雇用で使用する.
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