前年度までの研究で、認知言語学の立場から「知識構造としてのストーリー」「エモーション」「レトリックストラテジー」を主要概念として日常言語の使用の実相を明らかにしていく上での見取り図は得られた。平成28年度は、その道筋に沿って体系の肉付けと精緻化を図った。(i)引用(quotation)について、認知語用論的にその意義、機能、形式的特徴について掘り下げた。他の定型表現同様、idiomatic creativity (Langlotz 2006)を示すことを見た。 (ii) 決まり文句と一般に呼ばれるものの分類を確認し、引用クリシェ、ことわざクリシェなどの分析例を追加した。(iii)ことわざの中で一定形式をもつものとしてbetter X than Yを取り上げ分析した。(iv)文法的には形容詞に着目し、non-intersectiveなgoodの用法、POORの意味拡張を扱った。(v)ディスコース例として、①新聞記事から、レトリックストラテジーとしての比較、ことわざの使用を取り上げ分析した。②物語紹介文の典型抽出を行った。(vi) 前年度に口頭発表したthe [X is X is X]構文の中で取り上げたserial constructionsの著者であるLangacker教授をUCSDに訪問し、直接報告しコメントを頂いた。その結果も加えて「The [X is X is X]構文について」(2017年11月刊行予定)としてまとめた。この論文は、[X is X is X]が一見非文に見えながら、文法内の言語単位として機能する点、エモーション、レトリックストラテジーの重要性を示す点で本研究成果として挙げられるものとなった。 上記研究成果はすべて認知言語学談話会で発表した。今後、本研究の言語習得面からの検討、及び英語教育への応用も視野に入れたい。
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